総務省は4月27日,通信事業者が提供するサービスの競争状況に関する評価案を発表した。初回となる2003年度は,インターネット接続とデータ通信サービスについて調査を実施。中でも,ADSL(asymmetric digital subscriber line),FTTH(fiber to the home),IP-VPNや広域イーサネットなど企業向け通信サービスの三つを重点的に調査した。

 競争評価は全国の通信事業者から,通信サービスの契約者数や保有する光ファイバ回線のデータの提出を受けることで進められた。収集したデータから,東西NTTや上位3社のシェア推移,市場の集中度を測る指標で評価を実施した。

 今回の結果をもって総務省の通信政策が即座に転換されることはなさそうだ。ただし総務省が通信市場を評価する視点が見えてくる。

 例えばFTTHサービスに関しては,(1)光ファイバは東西NTTと電力系事業者で複占(2社による独占),(2)ただし接続ルールが機能しており,マンションでは東西NTTと他の事業者がサービス面で競争している,といった結論を出した。

 ただ,「投資インセンティブと設備の開放は別の問題」,といったコメントを出しており,東西NTTによる光ファイバの非開放要求にくぎを刺している。これは東西NTTの光ファイバは「指定電気通信設備」として他社に自社利用と同じ条件で貸し出すことが義務付けられていることに対する意見。東西NTTは義務見直しを主張している。

 またADSLサービスについては,(1)高度に寡占的であるが,競争が有効に機能している,(2)東西NTTとソフトバンクBBが拮抗しており,単独の事業者が市場を支配している状況ではない,といった結論を発表した。

 総務省は今回の評価案に対するパブリックコメントを5月24日の17時まで受け付ける。その後6月にも最終評価を確定し発表する。来年度以降は,FTTHやADSL以外に新たな通信サービス分野を追加していく。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)