![]() |
「PtoP(ピア・ツー・ピア)を排除するのではなく,ユーザー間の公平性を確保すればインターネットが抱える問題は解決できる」--。4月27日に都内でシスコシステムズが主催した「第2回 Internet Architecture Forum」の場に,通信事業者のバックボーンを運用する第一線のエンジニアが集結。インターネットの抱える技術的な問題点について熱い議論を交わした。
公開パネルには,NTTコミュニケーションズ(NTTコム)の水越一郎氏,インターネットイニシアティブ(IIJ)の島上純一氏,日本テレコムの松嶋聡氏,フランステレコムの前村昌紀氏が顔をそろえた(写真)。加えて,同フォーラムで基調講演をした米シスコ・システムズのクラランス・フィスフィス氏がアドバイザを,シスコシステムズの河野美也氏がコーディネータを務めた。
国内インターネットのトラフィックを増加させているPtoPについて話が及ぶと,パネルの議論は一気に白熱。IIJの島上氏は,「PtoPソフトを利用する数%のユーザーが総帯域の数十%を使っているのが実情。一般ユーザーのサービス品質が下がることだけは防がないといけない」と問題提起した。インターネット接続事業者の中には,大量のトラフィックを生み出す一部のユーザーを規制する動きも出ている。しかし,「これは苦肉の策。PtoPが必ずしも悪いわけではない。通信事業者側でアプリケーションに優劣を付けられる問題でもない」(島上氏)と言明。話題は“次なる一手”に集中した。
「トラフィック量に応じて課金すれば解決する」(シスコのクラレンス氏)という意見も飛び出したが,競争の激しい日本のブロードバンド市場では,従量制への移行はおいそれと出来ない状況にある。そこで解決策として提示されたのが「公平性の確保」である。ユーザーに利用できる帯域を公平に割り当てようというのである。
バックボーンに流れ込むトラフィック量が少ないときは,PtoPソフトの利用者もそのまま使える。込み合ってきたら,PtoPを利用するユーザーとそうでないユーザーが使える帯域に差が出ないように,網端の装置で制御するというわけだ。ただし,「サービスを提供する際には,ユーザーの契約形態に応じてトラフィックを制御すべき。しかし,現状の機器ではトラフィックのフローごとにしか制御できない」(NTTコムの水越氏)と技術的な課題も浮き彫りになった。
(山根 小雪=日経コミュニケーション)