総務省は4月26日,日本のインターネット・バックボーンの在り方などを検討する「次世代IPインフラ研究会」の第3回会合を開催した。今回は6月に取りまとめる予定の第1次報告書案を提示し,総務省が初めて実施した国内のインターネット・トラフィックの調査結果を公開した。

 インターネット接続事業者(プロバイダ)間の接続には,インターネット相互接続点(IX)でつなぐ「パブリック・ピアリング」,プロバイダ同士で個別に結ぶ「プライベート・ピアリング」,他プロバイダが提供する中継サービスを使う「トランジット」がある。総務省は各方式での回線容量などを把握するためアンケート調査を実施。インターネットイニシアティブ,NTTコミュニケーションズ,ケイ・オプティコム,KDDI,ソフトバンクBBといった主要プロバイダ14社が協力した。

 現在,日本国内には約8000社のプロバイダが存在する。エスアールエス・さくらインターネットのデータ・センターに流れ込むトラフィック量から,調査に協力した14社のトラフィックが国内のインターネット全体に占める割合が約6割と判明。「ここからトラフィックの全体像を類推するのは可能」(総務省)と判断した。

 調査の結果,(1)パブリック・ピアリング,プライベート・ピアリング,トランジットの回線容量はそれぞれ同程度,(2)主要プロバイダ間の接続にはピアリングが多用されていること,(3)主要プロバイダ間の接続場所は東京に集中していること,(4)地域間トラフィックは東京-大阪が7割を占めていること--が分かった。

 トラフィック調査に関しては,「半年ないし1年に一回程度の継続的な観測が不可欠」(NTT持ち株会社の和才博美副社長)といった意見が相次いだ。インターネットイニシアティブの鈴木幸一社長は,「継続的なトラフィックの把握は重要だが,トランジット・データなどは経営情報と直結するため出しにくい面もある。報告書では,調査の主旨や秘匿性の維持方法などを明確化して欲しい」と主張した。このため今後は,なんらかの団体またはグループを作って継続的に実施する可能性も出てきた。

 第1次報告書案は,指摘があった修正事項を盛り込む形で4月中に公開し,パブリック・コメントを募集する。4週間の募集期間を経て,5月末もしくは6月上旬には第4回の会合が開催される予定である。

(山根 小雪=日経コミュニケーション)