NTT東日本とNTT西日本の2社が,通信事業者間の紛争を解決する総務省の委員会に「仲裁」を申請していたことが分かった。紛争のもう一方の当事者は新興通信ベンチャーの平成電電。東西NTTが昨年10月から提供する法人向けのIP電話サービスに対し,相互接続を拒んでいる。このため,東西NTTは4月上旬,総務省の電気通信事業紛争処理委員会に判断を委ねることとなった。
平成電電が接続を拒む理由は,法人向けIP電話への接続料の水準。通常の加入電話では3分4.37円と5円以下で済むものが,東西NTTの法人向けIP電話に対しては,3分およそ10円とおよそ2倍に上がる。通信事業者が自社の電話ネットワークをユーザー回線を収容する加入者交換局(GC局)につないでいる場合に起こる。
接続料は東西NTTの電話網を使うためのいわゆる“卸料金”。値上がりすれば,事業者の利益が減少したり,場合によっては“逆ザヤ”となる。“逆ザヤ”状態では,東西NTTのIP電話サービスのユーザーが増えれば増えるほど,通信事業者の持ち出し金額が大きくなる。ケーブル・アンド・ワイヤレスIDCなどもこの点を問題視している。
“逆ザヤ”が起きる直接の理由は,既存固定電話の番号をIP電話でも使うためのい わゆる「番号ポータビリティ」の仕組みと制度。これを法人向けIP電話のユーザー が活用することで顕在化した。NTT東日本は「コストと構築期間を考えれば最適の方法だった。NTT側だけが改造し,事業者側はまったく同じ方法で接続できることで決着した」(相互接続推進部)と制度が出来た5年前の状況を説明する。当時はCATV事業者の電話サービスなど,当時のニッチなサービスを想定しており,多少の“逆ザヤ”が生じてもさほど問題にはならなかった。今回,IP電話という主要なサービスが対象となったため,問題が表面化した。
なお相互接続していないため,平成電電からNTT東日本の法人向けIP電話のユーザー,東京都中央卸売市場築地市場青果部には電話がつながらない。同市場の電話組合は,今年1月にNTT東日本の三浦惺社長に抗議文を送っている。
東西NTTは「仲裁」で委員会のメンバーに白黒つけてもらいたい考えだが,平成電電は「申し出は受けない」(広報)としている。「斡旋」と違って当事者の双方が応じないと仲裁は成立しないため,ボールは再度東西NTTに戻される公算だ。
(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)