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東西NTTと総務省が,固定電話を新たに導入する際にユーザーが支払う7万2000円,いわゆる「施設設置負担金」の廃止に向けて動き出した。
NTT東日本とNTT西日本の2社が4月15日付けで,総務大臣に「施設設置負担金の廃止を含めた見直しが必要」との要望書を提出。総務省はこれを受ける形で20日に開催した総務省の情報通信審議会(情通審)の会合で,施設設置負担金の廃止を議論する委員会を設置した(写真)。この委員会では電話基本料の見直しも実施する。
廃止議論の背景には,初期導入費である施設設置負担金7万2000円が諸外国に比べて極めて高いということがある。負担金が不要なメニューも投入したが,そもそも「戦後復興時に電話をいち早く整備するための制度だった」(総務省幹部)という事情もある。
総務省が設置した委員会名は「基本料等委員会」。今年10月まで議論が進め,方針を決定する。これを受けて,来年4月の新年度からの廃止に向けた具体的な動きが本格化する可能性が高くなった。施設設置負担金を巡っては,総務省の研究会基本料等に関するスタディグループが昨年12月に「廃止を含めそのあり方を検討すべき」との結論を出している。
電話の導入時に支払う施設設置負担金はユーザーには身近なものだが,分かりにくい。特に,電話加入権との関係が難しい。
電話加入権は7万2000円の設置負担金を支払い,電話を導入することで得られる。この7万2000円は「電話網整備の資金にあてられるもので,ユーザーに返還する性格のものではない」(NTT東日本)。一方で他人から譲渡を受けたり街中の販売会社などからの購入によっても,電話加入権を得ることができる。現在1万5000~2万円前後で取引されている。
厳密には施設設置負担金は「電話網を整備するための資金」であり,電話加入権は「電話を導入する権利」であるが,一般のユーザーにとってはどちらの手段でも電話を導入することには変わりがない。
設置負担金を廃止すると電話加入権の価値が下がるのは確実。そのため,設置負担金の廃止前後には,(1)企業の資産として計上したり質権を設定した電話加入権の扱い,(2)電話加入権の売買を事業としている販売会社などへの影響--といった問題が指摘されている。電話加入権を保有する一般ユーザーからの反発へにも対応を迫られる。
(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)