米プロキシムは4月19日,「モバイル・セントレックス」を今後1年以内に,米国で実用化することを明らかにした。モバイル・セントレックスとは無線LAN機能を搭載した携帯電話を使うことで,社外では携帯電話,社内ではVoIP(voice over IP)携帯電話として利用できるシステム。米モトローラ,米アバイアと共同で開発を進めている無線LANスイッチング・システムを,米国では既に「複数の大手企業が試験導入済み」(プロキシムのイーハブ・アブハキマ上級副社長)である。

 この米国版モバイル・セントレックスは,プロキシムの無線LANスイッチ,アバイアのIP-PBX(構内交換機),モトローラのゲートウエイ装置と無線LAN機能付き携帯電話端末を組み合わせて構築する。ユーザーは,一つのダイヤルイン番号で受けた電話を社内外のどこにいても1台の携帯電話で着信できる。現在のように,会社のデスクに設置した固定電話の番号と,個人が持つ携帯電話の番号を使い分ける手間が不要になる。

 同システムの最大の特徴は,例えばユーザーが携帯電話で通話しながら社外から社内に移動した場合,携帯電話の接続先を社外の携帯電話事業者網から社内の無線LANへと自動的に切り替えられるところ。3社のネットワーク機器が独自のプロトコルをやり取りすることで実現した。なお,携帯電話機とIP-PBX間の呼制御は,国際標準規格のSIP(session initiation protocol)を拡張したプロトコルを採用している。

 システムを構成するネットワーク機器のうち,アバイアのIP-PBX「コミュニケーション・マネージャー」は出荷済み。プロキシムの無線LANスイッチは今後2~3カ月以内,モトローラのゲートウエイ装置と端末は10~12月ころの出荷になる。

 日本国内では,NTTドコモが無線LAN機能を搭載した携帯電話端末をNECと共同開発している。同端末を使った日本版モバイル・セントレックスも,米国3社が開発しているシステムと同様のもの。外線をIP-PBXで着信すると,ユーザーが社内にいる時は無線LAN経由で,社外にいる時は携帯電話網経由で端末を呼び出せる。ただし,日本国内は携帯電話事業者各社が主導して開発を進めている。米国は携帯電話の端末が事業者に依存しないこともあって,端末ベンダーが主導している。

 プロキシムは19日,セキュリティ機能を強化したアクセス・ポイントの新製品「ORiNOCO AP-4000」も発表した。1台でIEEE 802.11a/b/gを同時に利用できる。最新のセキュリティ標準規格であるWPA(Wi-Hi protected access)や,IEEE 802.1Q準拠のバーチャルLANなどに対応した。同日から出荷開始で,NSK,高文,ディティアイ,日本NCRが販売する。価格はオープンだが,12万8000円~19万8000円になる見込み。

(加藤 慶信=日経コミュニケーション)