米シスコ・システムズはIP電話システムの“要”である呼制御サーバー「Cisco CallManager」をバージョン4.0に刷新する。米国では1月末に出荷済み。日本では第3四半期中に投入する。

 米シスコ・システムズのエンタープライズ ボイス・アンド・ビデオ プロダクト・マーケティングのハンク・ランバート ディレクタに,CallManager 4.0の特徴と米国を中心としたIP電話を取り巻く状況について聞いた。以下はインタビューの1問1答。

――IP電話サーバー「Cisco CallManager」の最新版4.0を日本でも第3四半期に出荷する。どんな機能を追加したのか。
 もっとも強調したいのは「ビデオ・テレフォニー」だ。いわゆるテレビ電話機能だ。IP電話で相手を呼び出して,パソコンや専用のディスプレイを利用した会話ができるようになった。そのほか,IP電話機とCallManagerの間のやり取りを暗号化するといったセキュリティ機能も追加した。CallManagerのインストールや管理といったインテグレータや管理者向けの機能も向上させている。

――テレビ電話は昔からある。なぜ今CallManagerで対応したのか。
 声だけよりも画像を使うことでコミュニケーションがより有効になる。身振りが分かったり,高画質の画像であれば眼の動きも見ることができる。相手が緊張しているのか,自信を持っているのか判断できるようになる。なぜ今かということだが,パソコンの性能向上や安価なUSB接続カメラの登場,IPバックボーンの容量拡大と低価格化といったさまざまな要因がやっとそろった。これが大きい。

――IP電話のセキュリティに関する懸念や話題が出てきた。シスコはどう考えているのか。
 SIPのプロトコルについても,CallManagerについても,いくつかのぜい弱性が指摘されている。シスコはCallManagerにぜい弱性が見つかったとしても,短期間で修正する。SIPに関しても,IETFにシスコのエンジニアを派遣し,セキュリティ面の強化に取り組んでいる。今回,CallManagerに追加した,呼制御や通話の暗号化,接続するIP電話の証明書による認証などもセキュリティ強化の一環だ。

――日本ではIP電話の緊急通報に対する取り組みが始まった。CallManager側の対応を教えて欲しい。
 シスコ・エマージェンシー・レスポンダーという製品によって,緊急通報に対応している。シスコは米国で緊急通報を議論しているNENA(National Emergency Number Association)に参画。IETFのSIPワーキング・グループでも緊急呼の標準化に取り組んでいる。

 CallManagerでの具体的な対応は以下の通りだ。まず,あらかじめIP電話のMACアドレスと位置情報をCallManagerに登録しておく。そして,接続しているIP電話から緊急通報をすると,その位置情報を緊急通報機関に対して通知する。位置情報のフォーマットはNENAで決めている。地域の緊急通報機関で,フォーマットが異なっている。シスコはこれをカスタマイズするツールを提供している。

――IP電話サービスに関する特許の問題が日本で議論され始めた。シスコはIP電話関連の特許をどのように運用しているのか。
 シスコは技術者に対して,斬新な技術を実装する際には特許として出願するよう推奨している。基本的なポリシーとしては,防衛だ。万が一シスコが訴訟を受けたとしたら,訴訟を受けた側がシスコの特許を侵害していないか調べる。可能であれば交換の取引をする。シスコ側から侵害している相手を積極的に探すことはない。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)