総務省は3月30日,電気通信事業の競争評価に関するシンポジウムを開催した。競争の状況を把握するため,(1)通信サービスの市場をどういった区切りで見るのか,(2)競争状況をどういった尺度で判断するのか--といった議論を重ねている。昨年7月にまとまった「IP化等に対応した電気通信分野の競争評価手法に関する研究会」の報告書の内容を受けた動きだ。

 議論が白熱したのは,NTT地域会社の光ファイバについて。予定時間を大幅にオーバーした。現時点では,規制によって開放が義務付けられている。

 ソフトバンクBBは「光ファイバを引き回す電柱や管路も巨大なインフラ。(NTT地域会社に)この指定席を握られている」(接続企画本部の宮本正男本部長)とインフラ面を問題視。イー・アクセスは,「NTTはメタル線が将来使えなくなることを見越し,光ファイバのサービスを独占しようとしているのか」(庄司勇木常務執行役員)。KDDIは「光ファイバの規制は外すべきではない。電話のメタル線を代替するものだ」(渉外・広報本部の篠原聡兵衛渉外部次長)とメタル線との関係を指摘した。

 これに対しNTT地域会社は「FTTHは採算が取れる場所から順番に敷設している。敷設していただけるのであれば借りたいぐらい」(NTT東日本経営企画部の尾崎秀彦担当部長),「光ファイバを敷設してもユーザーが付くかどうか分からないなど投資リスクが伴う。このリスクを分担して欲しい」(NTT東日本有馬彰取締役経営企画部長)と一貫して反論を繰り広げた。

 総務省は現在,2003年度(平成15年度)の競争評価に取り組んでいる。「ADSL(asymmetric digital subscriber line)」,「FTTH(fiber to the home)」,「法人向けサービス」の3分野を選択した。シンポジウムには,関連する事業者であるイーアクセス,NTTコミュニケーションズ,NTT東日本,ケイ・オプティコム,ケーブル・アンド・ワイヤレスIDC,KDDI,ソフトバンクBB,東京電力,日本テレコム,パワードコムの担当者が出席。議論を交わした。今後4月下旬に競争評価の手法をまとめ,パブリックコメントを募集。6月には評価結果を公表する。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)