総務省の情報通信審議会の情報通信技術分科会は3月24日,第24回会合を開催した。会合では,実用化に向けた検討が進む高速な無線通信システム「UWB(ultra wideband)」についての中間報告を実施。実用化までは問題が山積していることが改めて浮き彫りになった。
UWB無線通信システムは,500MHz幅以上の広い周波数を占有して,高速な通信を実現する技術。10m程度の近距離で数十~数百Mビット/秒程度の通信速度を目指している。IEEE(米国電気電子技術者協会)が標準化作業を,FCC(米国連邦通信委員会),ITU-R(国際電気通信連合無線通信部門),日本の総務省などが周波数利用方針の検討を進めている。
非常に広い周波数を利用するため,他の無線システムとの干渉をいかに避けるかが最大の課題になる。これまでは,会社や研究機関などがそれぞれで検討してきた。しかしUWB無線システム委員会主査の安藤真東京工業大学理工学研究科教授は,従来のやり方では超えられない壁があると指摘。「従来からの無線システムが10も20もある。一つの企業が検討できる範囲を超えており,国が体制作りを進めるべきだ」とした。
周波数の使い方は国ごとに異なり,中間報告では「日本仕様」を提案している。これに対し,情報通信技術分科会長代理の原島博東京大学大学院情報学環長・学際情報学府長から「UWB無線通信システムはパソコンなどに搭載される。海外から持ち込まれる可能性もあり,国内だけで基準を決めるのは無理ではないか」との指摘があった。
中間報告では,レーダーや電波天文などとの干渉を避けるため,飛行機や船への持ち込みや天文観測所の近くでの使用を禁止する方向性を示している。「しかし実際には,このルールを守るのは難しい」(安藤東工大教授)と干渉問題への対応に苦慮する様子が伺えた。
(白井 良=日経コミュニケーション)