総務省は3月19日,第3世代(3G)移動通信システム「IMT-2000」で利用する2GHz帯の周波数のうち,割り当てを見合わせてきた周波数の今後の取り扱いについて,基本方針案を発表した。同案では「既に免許を割り当てているNTTドコモ,KDDI,ボーダフォンが追加割り当てを必要とした場合に,公正な手続きを経た上で割り当てる」ことを基本方針としている。既存の携帯電話事業者に割り当てることを基本方針とした今回の決定により,今後ソフトバンクからの反発は必至だ。

 現在,3G携帯電話サービスは,NTTドコモ,KDDI,ボーダフォンが提供中だが,各社に割り当てられた周波数帯の間には空きがある。IMT-2000の周波数帯を割り当てた当時,上り/下りでそれぞれ60MHzの周波数帯を用意した総務省は,立候補した3事業者に20MHzずつを割り当てることを決めた。ところがその後,PHSと隣接する周波数帯で干渉が発生することが発覚。そこで干渉を避けるために,KDDIに割り当てた周波数帯のうちPHSと隣接する5MHzを使用せずに空けることを決定。そして,公正な競争条件を確保する理由から,他の事業者も5MHz分を空けることにした。

 つまり,NTTドコモとボーダフォンが空けた上り/下りの計20MHz分については,技術的には割り当てられない理由はない。今回の意見募集は,これまで見合わせてきた同周波数帯の割り当て方針に関するものである。

 割り当てを見合わせてきた周波数帯を巡っては,既存の携帯電話事業者のほかソフトバンクが割り当て欲しい旨の主張を続けてきた。同社は,CDMA2000方式を使う携帯電話サービスの準備を水面下で進めている。

 新事業として携帯電話サービスを計画中のソフトバンクは,「一層の競争を促進するためには既存事業者以外の新規事業者に割り当てるべき」などの意見を提出。総務省へIMT-2000の周波数帯割り当て見直しを訴えた。一方で,3Gサービスで200万ユーザーを突破したNTTドコモは,「データ・トラフィックの急増などの影響で,今後1年程度で周波数のひっ迫が生じる可能性がある」などの意見を提出した。

 今回の割り当て方針案を明らかにした理由として,総務省は「効率的な周波数の利用を第一に考えた結果」としている。今回の方針案に対しては,再度意見を募集する。

(蛯谷 敏=日経コミュニケーション)