総務省は3月19日,「次世代IP網ワーキンググループ」の第4回会合を開催した。今回の会合では,6月に取りまとめる予定の報告書素案について議論した。ただし,まだ未完成の部分が多い。インターネット接続事業者(ISP)間やユーザーのトラフィックをどのようにして把握するのかということ。これを把握しないことには,机上の空論になりかねない。

 具体的には,(1)国内向けと海外向けのトラフィックがどのような傾向にあるのか,(2)解を見つけるには,“フィールド実験”が必要だが現在動いている網でやるのか,(3)各ISPが他のISPとどのように接続しているのか,--といった意見が出された。ISP間の接続には,インターネット相互接続点(IX)とISP同士で個別に結ぶピアリング,トランジット回線の調達,といった種類がある。

 各ISPから懸念の声が上がったのが,一つの解として考えられる「東京に集中しているトラフィックを分散させる」という点である。ワーキンググループでは,「およそ4対1の割合(8割)でトラフィックの交換地点が東京に集中している」(グループリーダーを務める東京大学の江崎浩氏)と見ている。ただし,ISP側からは「一度分散型にしたら容易に集中型には戻れなくなる。アドレス管理のポリシーはどうなるのか。正直言って怖い」(インターネットイニシアティブの三膳孝道氏)といった意見が相次いだ。

 トラフィックを分散させるかどうかには,各ISPの懐具合も関係する。東京でトラフィックを交換した方が,安くて容量の大きい回線を調達できるという経済的な合理性がある。技術面とビジネス面での折り合いをどうつけるのか,という問題も浮き彫りになりつつある。自社が保有しているIPアドレスを,各IXなどで分割して運用するとアドレス管理の手間も増える。

 次世代IP網ワーキンググループは「次世代IPインフラ研究会」の下部組織で,インターネット・トラフィックの急増に対する,IPインフラの整備や必要となる政策面での支援について議論している。現在約2週間に1回のペースで議論を続けており,親組織の「次世代IPインフラ研究会」が報告書をまとめる上で必要な情報を報告するのが主目的。次世代IPインフラ研究会は,日本のインターネット・バックボーンのあり方などについて2004年6月に第1次報告書,2004年末に第2次報告書をまとめる予定になっている。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)