KDDIの小野寺正社長が3月17日の会見で,「法人営業部門の分社化を検討している」と明言した。具体的な方針が決まり次第,固定通信の法人営業部門を分社化し,新会社を設立する予定。「将来的には,新会社とKCOMなどの関連子会社を合併させることもありうる」(小野寺社長)。

 分社化の狙いは,法人営業部門の効率化と採算性向上にある。4月の改正電気通信事業法の施行により相対契約が解禁されると,法人市場の料金値下げ競争がますます激化する可能性がある。小野寺社長は「相対契約解禁は正直頭が痛い。だたし固定通信事業はどこの会社も業績が厳しいので極端な料金競争にはならないだろう」と予測する一方で,相対契約解禁に備えた対策も欠かせないと判断したようだ。

 一方で,収益が好調な携帯電話事業を絡めた法人営業を強化する。KDDIは,4月1日付けの大規模な組織改革と人事異動で,相当数のモバイル・ソリューション営業の担当者を拡充したもよう。「営業担当者の体質として,売りやすいサービスを一生懸命売る傾向にある。これまでは固定通信のサービスを売る営業人員が圧倒的に多かったので,auを使ったモバイル・ソリューションの営業が疎かになっていた。今後はモバイル・ソリューションを強化する」(小野寺社長)。

 固定通信と移動通信を一括提供できるというKDDIの強みについては,「あくまで法人営業部門の分社化であって,固定通信すべてを切り離すわけではない。法人向けのモバイル・ソリューションは固定通信との組み合わせがほとんど。KDDIの強みは発揮できる」とコメントした。

 現状の法人営業部門の中で,どのくらいの人員や機能を分社化させるのかは具体的な明言を避けた。「法人ユーザーの規模はピンキリであり,法人営業の定義自体が難しい。引き続き検討する」(小野寺社長)。分社化の時期についても検討中とし,「労働組合への説明は既に済んでいるが,まだ了承は得ていない。時間がかかるだろう」(小野寺社長)との見通しを示した。

(宗像 誠之=日経コミュニケーション)