総務省は3月16日,総務大臣の諮問機関である情報通信審議会の電気通信事業部会を開催した。部会では,NTT東西地域会社の電話接続料について,委員から抜本的な見直しを求める声が相次いだ。

 東西NTTの電話網を使って電話サービスを提供している通信事業者は,通話時間に基づいて東西NTTに接続料を支払っている。接続料の算定方式には,長期増分費用(LRIC)方式を採用。最新の技術を使って電話網を格安で構築した際のコストを通話の総時間で割ることで接続料を出す方式だ。

 携帯電話やブロードバンドの普及で,通話時間の減少が予想を超えて速くなっているため,2003年度から「事後精算」という仕組みを加えた。これは,以前のトラフィックから接続料を仮算定し,実際のトラフィックが15%以上減っていれば後から実際のトラフィックに基づき精算するというもの。2003年度のトラフィックは20%以上減ったため,事後精算することになった。精算額は東西NTTの内部精算も含めて,NTT東日本が180億円,NTT西日本が160億円にも上る。事後精算方式については,接続料を払う側の通信事業者から不満の声が出ている。

 この状況に,審議会の委員が相次ぎ意見を出した。青山学院大学教授の東海幹夫委員は,「このままトラフィックが減っていけば,ユーザーが支払う電話料金の値上がりにつながる可能性がある」と指摘。これに対して総務省は,「2004年度までの接続料は確定しているが,2005年度以降のルールは色々な観点で検討を進めている。2005年度には電話基本料の変更や施設設置負担金の廃止も含めて,接続料の見直しを検討している」と説明した。

 これに東海委員は,「2005年度以降の接続料の枠組み作りは,もう進めないといけないのではないか」と主張した。さらに大阪大学大学院教授の辻正次委員は,「基本料や施設設置負担金など一部の手直しだけでは,対応できないのではないか。ネットワークをどう維持するのかなど,枠を広げて根本的に考えないといけない」と,現行のLRIC方式以外の採用も視野に入れて検討すべきと強調した。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション)