公正取引委員会(公取委)は2月25日,NTT東日本のFTTH(fiber to the home)サービスへの排除勧告に関して1回審判を開催した。2003年12月4日に公取委が下したNTT東日本に対する独占禁止法違反の排除勧告にNTT東日本が応諾しなかったため,審判の場が設けられた。審判ではNTT東日本の代理人と,調査した公正取引委員会側が激しく意見を戦わせた。

 NTT東日本の代理人は意見陳述で,「甚だしく根拠がなく,独占禁止法の違反には当たらない。排除勧告を出せば黙って従うと思っていたかも知れないが,こうした誤った法解釈に従う通信事業者などいない。ただちに,審判は打ち切るべきだ」と,強い語調で公取委の勧告に反発した。

 問題となったのは,NTT東日本が家庭向けに提供するFTTHサービス「Bフレッツ ニューファミリータイプ」。他の通信事業者向けに卸売りする際の接続料では,1心の光ファイバを電柱上で分岐し,複数ユーザーで共用している形態を提示していた。ところが,実際には分岐せずに,1心を1ユーザーで占有する形態でユーザーに提供。他の通信事業者に1心の光ファイバを占有するタイプを卸売りする際の接続料は月5000円以上だが,ニューファミリーはこれを下回る月4500円でユーザーに提供していた。

 公取委は,「NTT東日本は他の通信事業者に卸し売りする接続料よりも,ユーザー向けの料金を安く設定して,他社の参入を阻害した。形式上,NTT東日本は分岐方式を他の通信事業者に形式的には貸すと言うが,接続するための機器の設置場所など接続のための具体的なフローができていない」と指摘した。

 一方NTT東日本側は,「ニューファミリーのユーザー料金の引き下げは,FTTHやブロードバンドの競争を促進したのではないか。料金引き下げは消費者の利益にもなる。消費者よりも,一部の通信事業者の利益を優先させるべきなのか」と反発。さらに,「当初はコスト面から,分岐しない方が合理的と判断していただけ。民間企業なら当然取るはずの真っ当な設備運営の何が問題なのか」と主張した。

 今後も,NTT東日本と公取委の双方が主張を出し合う。第2回審判は,4月28日に開催する予定である。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション)