12メガADSLと24メガADSL(asymmetric digital subscriber line)の国際標準で,4月にも日本仕様が勧告化される見込みとなった。2月18日,国内で使う通信技術の標準化を行う情報通信技術委員会(TTC)のDSL専門委員会で,ITU-Tに日本仕様を提出することを決定した。ITU-TでDSL仕様を議論しているStudy Group 15(SG15)の4月会合をターゲットにしている。

 具体的には,12メガADSLのITU-T標準である「G.992.3」と24メガADSLの「G.992.5」のそれぞれに,日本のISDNとの干渉を考慮した仕様を追加する。付属勧告名は従来のADSL技術と同様に「Annex C」が追加され,それぞれ「G.992.3 Annex C」,「G.992.5 Annex C」となる見込みだ。北米向けの「Annex A」はすでにG.992.3が2002年7月,G.992.5が2003年1月に勧告化している。

 日本仕様が決まることの国内への短期的な影響は小さい。12メガADSLはG.992.1のオプション仕様を使ってすでにサービスが開始されている。チップ・メーカーが独自に実装していた機能などが盛り込まれ,日本向け仕様が「G.992.1 Annex C改訂版」として2003年5月に勧告化されている。また,24メガADSLも同様に日本向け仕様が「G.992.1 Annex I」として2003年5月に勧告化され,各ADSL事業者が採用している。

 長期的にはG.992.3やG.992.5が海外のADSLサービスで採用されることで,機器コストが下がることが見込まれる。ただしこれらのAnnex C仕様を基にしたサービス同士が相互接続できるかは未知数だ。ADSLサービスはチップ・メーカーが独自の技術を盛り込むため,国際標準をそのまま実装しても接続ができない場合がほとんどだからだ。特に技術やサービス競争の激しい日本ではこの傾向が強い。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)