KDDIは2月16日,同社の固定通信部門を分離することを検討中であることを明らかにした。「検討を始めたのは,つい最近。どの部門までを分離するのか,いつまでに決めるのかなども含めてすべて検討中」という。

 KDDIは事業を大きく4事業に分けて構成する。具体的には,携帯電話の「au事業」,企業向けの専用線やIP-VPNや広域イーサネットなどのWANサービス,固定電話の「BBC&ソリューション事業」,PHS事業者DDIポケットの「ポケット事業」,そして携帯電話事業者ツーカー・グループの「TUKA事業」である。

 このうち,au事業が絶好調である。2004年3月までの通期で売り上げが1兆8170億円,2320億円の営業利益を見込む。営業利益は前期2003年3月の538億円に比べて4倍以上の伸びである。一方のBBC&ソリューション事業は売り上げが同時期で5450億円,180億円の営業利益を見込んでいる。利益はau事業とは対象的に前期の603億円から3分の1以下に落ち込んだ。KDDIにとって固定通信部門へのてこ入れは急務といえる。広域WANではNTTコミュニケーションズや日本テレコムとの競争が激化。音声通話は,IP電話や携帯電話の影響で激減しているからだ。

 現時点で,同社社員への説明はなされていない模様。どのような形で,いつ分離するのかは見えていない。議論の焦点は,(1)企業向けの専用線やWANサービス,(2)光ファイバを使った個人向けのFTTHサービス「光プラス」を含むブロードバンド,(3)長距離や国際などの固定電話,(4)携帯電話を使った企業向けシステム構築を含むソリューション-ーという4部門の扱いになる。

 NTTドコモやボーダフォンと同じ“業態”を目指すのであれば,(4)以外はすべて別会社化する道がある。ただし,固定サービスから携帯電話まですべてを持っていることが強みとの声がKDDI社内にも根強い。どちらにしても,KDDIがさらなる利益確保に向け,構造改革を推進していることは間違いない。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)