ソフトバンクの孫正義社長は2月12日,2003年度第3四半期(2003年10月から12月まで)の決算発表会で,グループが展開するADSL(asymmetric digital subscriber line)サービス「Yahoo! BB」の加入者数目標を上方修正。「2005年9月までに600万以上を達成する」(孫社長)とした。

 孫社長は従来「2004年3月の時点で400万。その後は顧客獲得を止めて利益を確保することも選択肢とする」と説明していた。2004年1月末のユーザー数は382万。400万の達成が確実になったため,新たな目標を打ち出した。200万の上乗せ分は「顧客獲得費用を今よりかけても達成する」(孫社長)と強気の構え。費用のかけ方によっては,改善の兆しが見え始めたソフトバンク・グループのブロードバンド・インフラ事業の損益が悪化する可能性もある。ブロードバンド・インフラ事業には主としてソフトバンクBBのADSL事業が含まれる。

 ユーザー数の目標を引き上げた理由について孫社長は「ソフトバンクBBの営業利益を年間1000億円とするため」とした。400万ユーザーの場合はソフトバンクBBの年間営業利益が600億円だが,600万ユーザーとすることで営業利益が2倍の年間1200億円となると見積もっている。

 さらに,孫社長は600万ユーザーに到達後,ユーザー数を維持する方策についても言及。「月間の想定解約率が1%とすると,1%に当たる6万ユーザーを顧客当たり3万円のコストで獲得して埋めていく」と説明した。

 第3四半期のブロードバンド・インフラ事業の売上高は344億円。営業損益は179億円の赤字となった。前年同期に比べて売上高が241億円増え,営業損益は291億円の赤字から112億円改善した。なお,ソフトバンク・グループの連結決算は,第3四半期の売上高が1366億円,営業損益が66億円の赤字となった。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)