「実験期間を含めて2年後をめどに,東京や大阪などメトロポリタン・エリアからメガビット級の高速無線データ通信サービスを始めたい」--。ADSL事業者のイー・アクセスは2月5日,商用化を検討しているTD-SCDMA(MC)方式の無線通信システムの技術説明会を開催。その場で,千本倖生社長(写真)がサービス・イメージの一部を明らかにした。

 イー・アクセスは,2004年3月からTD-SCDMA(MC)方式を使った高速無線データ通信の屋外実験を始める考え。現在,総務省に実験局免許の申請をする準備の最中だ。「例えばPHSの商用化は,実験期間を含めて2年くらいで実現できた。今回も(技術的には)同じくらいの時間で商用化できるだろう」(千本社長)。

 ただし,イー・アクセスが2年後の2006年春から商用サービスを始められるかどうかは不透明。総務省が周波数を割り当てるか分からないからだ。イー・アクセスが選んだTD-SCDMA(MC)方式は,国際標準規格「IMT-2000」に含まれない。一方,総務省は現在,TD-CDMAとTD-SCDMAの二つのIMT-2000規格向けに,2010M~2025MHz帯を開放すべく検討を進めている。つまり,総務省がイー・アクセスのTD-SCDMA(MC)方式を認める可能性は高くはない。

 この点について千本社長は,「韓国や中国は,高速無線データ通信サービスを商用化する際に,IMT-2000規格に必ずしもこだわっていない。技術革新の早い世界なので,日本も標準にこだわらずに最先端の技術を採用しないと,世界のワイヤレス競争から脱落する」と主張。ユーザーもより良いサービスを求めていると補足した上で,TD-SCDMA(MC)方式の採用を総務省に呼びかけた。無線通信の“常識”に挑むわけだ。

 千本社長は,具体的な料金水準は明らかにしなかったものの,「従量料金ではだめ。定額にしたい」意向である。TD-SCDMA(MC)方式でも音声通話は技術的には可能だが,現時点では高速無線データ通信サービスの提供をメインに考えている。

(杉山 泰一=日経コミュニケーション)