「コスト削減だけが目的のプロジェクトは成功しないもの。IP電話の導入もコスト削減だけでなく,業務改善,ひいては顧客満足度の向上という大きな目的がある」――UFJ銀行の村林聡システム企画部長は,2月4日から千葉・幕張メッセで開催されている「NET&COM 2004」の2日目のキーノート・スピーチでこう力説した(写真)。会場は立ち見も出るほどの盛況ぶりを見せ,IP電話への関心度の高さがうかがえた。

 UFJ銀行は全国500店舗のPBXを撤廃し,約4万台の電話機をIP電話機やソフトフォンに切り替える巨大プロジェクトを進めている最中。総予算は,社内ネットワークの更改を併せて100億円。世界的にも最大規模のIP電話ユーザーが誕生しようとしている。

 “IP電話”というキーワードばかりに目がいきがちだが,村林企画部長は「IP電話はあくまでアプリケーションの一つ」と繰り返し強調した。UFJ銀行ではすでに,ATM(現金自動預け払い機)を24時間365日で稼動中。今後は,バイオメトリクスを使った顧客認証や,巨大ストレージを使った通帳の電子化などを進めていくという。IP電話の導入も,こうした新しいアプリケーションを実現するための1手段に過ぎない。

 「IP電話導入によるコスト削減効果は,PBXの更改をするより安いという程度。それよりも音声とデータを組み合わせる“ユニファイド・コミュニケーション”で業務効率を改善することが目的だ」(村林部長)。例えば,営業部員が社外からIP電話機に音声で日報を吹き込めるようにしたり,1カ所のコール・センターで一括して受けていた顧客からの電話を営業所で受けられるようにする――など複数の使い方を検討中だと説明した。最後に,「今後,IP電話機は単なる電話機ではなく,音声や画像を含めた端末になる。我々ユーザーとメーカーとで協力していいものにしていきたい」と抱負を語った。

(山根 小雪=日経コミュニケーション)