「コスト削減のための『IP電話』から,音声と画像,業務アプリケーションを連携し新たなビジネスに活用する『IPコミュニケーション』へ進む」――シスコシステムズの財津健次IPコミュニケーション部部長は,千葉市・幕張メッセで開催中の「NET&COM 2004」における「ネットワーク運用と構築」カンファレンスで,IP電話と業務システムの連携が進んでいることを紹介した。

 財津部長が掲げるIPコミュニケーションは、IP電話を中心に種々の業務システムを統合すること。そのメリットとして「作業場所に縛られない共同作業が可能になる。加えて、システム統合により管理コストを削減できる」とした。これまでの企業インフラは「電話やテレビ会議システムなど作業場所がオフィスに限定されてきた。各システムが独立し管理コストが別々にかかる」(財津部長)からだ。

 業務連携の一例に挙がったのが、新光証券のケース。「NSTechno-phone Manager」と呼ぶシステムを開発した。電話を掛けていた相手の情報をパソコンに表示したり、不在者に代わって電話に出た場合は「伝言メモ登録」ボタンをクリックだけで相手の情報と伝言内容を不在者に送信したりできる。伝言メモを書く手間が軽減し業務を効率化した。しかも新光証券は、IP電話システムの導入で年間4000万円のコスト削減を実現しているという。

 IP電話と業務アプリケーションを連携するためにシスコが用意するのはAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)の公開。これまでにシスコが相互接続性を検証したISV(独立系ソフトベンダー)製品が76種あり、うち23製品が日本市場で販売されている。具体的には、米ナイス・システムズが開発した音声録音ツール「NICE VoIP Recording」や,ソニーやソフトバンク・テクノロジーなどが開発したIPテレビ会議システムなどがある。

(白井 良=日経コミュニケーション)