総務省は2月3日,「次世代IPインフラ研究会」の第1回会合を開催した。今後約1年かけて,日本のインターネット・トラフィック急増に対応できるIPインフラの整備や,整備に必要な政策支援方法について議論する。メンバーには,NTT(持ち株会社),インターネット イニシアティブ(IIJ),ケイ・オプティコム,NEC,ソニーなどの大手通信事業者やメーカー,大学教授などの識者が勢ぞろいした(写真)。

 総務省は,研究会を開催した理由として「日本のブロードバンド・サービスは,世界一安いといっても過言ではない水準になってきた。だがその一方で,ユーザーのトラフィックを支えるバックボーン・ネットワークについては,これまで大きな議論はされてこなかった。今後さらにトラフィックが急増するとして,果たして既存のネットワークで支えられるのか。この点について,もう一度根本から考え直して欲しい」(有富寛一郎総合通信基盤局長)と説明した。

 これを受けて,第1回の会合では今後,(1)今後トラフィックの増加を生み出しそうなアプリケーションは何か,(2)ネットワークのボトルネックになるのはどこか,(3)トラフィックの法的あるいは技術的な抑制は可能か,(4)ネットワークの障害・災害時の運用はどうするか--などの点について議論することが確認された。

 さらに,IIJの鈴木幸一社長は資料を用意し,既存の電話ベースの通信インフラでは今後のトラフィックを支えきれないことを説明した。「インターネットの使い方はそれこそ無限。我々の想像以上の使い方をして,トラフィックは今後もさらに増加する可能性がある。そのためには,既存の電話ベースの通信インフラでは絶対に支えきれない。ネットワーク・インフラの全面的な補強が必要だ」(鈴木社長)と危機感をあらわにした。

 鈴木社長の説明に対して,イー・アクセスの小畑至弘CTO(最高技術責任者)が「トラフィックの伸びは予想されるほど急増しないのではないか」と意見。これに対して,慶応義塾大学の村井純教授が反論するなど,第1回の会合から,活発な議論がやり取りされた。

 今後は,より詳細な議論をする「次世代IP網ワーキンググループ」に場所を移し,具体的な検討に入る。これらの議論を経て,2004年6月に第1次報告書,2004年末に第2次報告書をまとめる予定だ。

(蛯谷 敏=日経コミュニケーション)