NTTドコモは1月27日,第3世代携帯電話サービス「FOMA」向けの新端末「900iシリーズ」の展示会を,報道機関を対象に都内で開催。5機種ある各製品の詳細スペックと発売予定時期を一部明らかにした。まずは2月中に,富士通製の「F900i」を発売する見通しだ(写真左上)。

 ドコモの携帯電話機の中でひときわ人気が高いNEC製品とパナソニック モバイルコミュニケーションズ製品は,3月末までのできるだけ早い時期に発売できるよう,開発を急いでいる。今回のモデルは,NEC製品が「N900i」(写真下),パナソニック製品は「P900i」(写真右上)。

 900iシリーズにはこの他,三菱電機の「D900i」とシャープの「SH900i」がある。展示会では,富士通とNEC,パナソニックがバッテリの持ち時間に関する最終スペックを公表していたのに対して,三菱電機とシャープは参考値を紹介していた。さらに富士通は「F900iT」,パナソニックは「P900iV」と呼ぶ上位機種も開発中だが,この2機種に関する展示はなかった。

 実は,ドコモは2003年12月18日に900iシリーズ5機種を披露する記者発表会を開催済み。ドコモの夏野剛iモード企画部長が,「世界最強のケータイ」と900iシリーズを表現し,自信のほどを見せつけた。その際に公表された数値では,連続待ち受け時間は5機種とも静止状態で300時間だった。しかし,今回あらためて明かされた数値を見ると,この点が大幅に改善されている。

 F900iの連続待ち受け時間は静止時で480時間,移動時は360時間。N900iは静止時が430時間で,移動時は350時間である。P900iは静止時500時間,移動時350時間。これに対して,まだ最終スペックが確定していないD900iは静止時が450時間以上,移動時は350時間以上,同じくSH900iは静止時400時間以上,移動時300時間以上としていた。

 携帯電話機の連続待ち受け時間は,フル充電した状態から一度も通話やデータ通信をせずに何時間バッテリーが持つかを示す指標。auやボーダフォンなど競合他社は通常,電話機を机の上などに置いた静止時の数値を公表している。

 一方,ドコモが今回明らかにした移動時の連続待ち受け時間は,フル充電した電話機を持ち歩き,基地局を切り替える処理(「ハンドオーバー」と呼ぶ)を何度か行った時の数値。携帯電話機は待ち受け時でも,位置情報をやり取りするために基地局と断続的に交信している。ハンドオーバーを繰り返すと,交信の頻度が高まり,バッテリーの消耗が早くなる。

 静止時の連続待ち受け時間に着目すると,900iシリーズは他の携帯電話機と比べてそん色ない。ドコモやボーダフォン,ツーカーのPDC(personal digital cellular)と呼ぶ現行方式の携帯電話機とバッテリーの持ち時間は同水準。auのCDMA2000 1x方式の第3世代携帯電話機と比べると,ほぼ2倍もバッテリーが持つ。

 バッテリーの持ち時間だけ見て携帯電話機を購入するユーザーは少ないと見られるが,「FOMAはバッテリーが持たない」という悪評は900iシリーズの登場によって完全に過去のものとなりそう。そして,PDC携帯電話機の置き換えを本気で狙った900iシリーズはどこまで市場に受け入れられるか。例えばNECは,N900iを200万台以上売りたいという。NEC製品で過去最も売れたのは,PDC携帯電話機「N504iS」の400万台である。今後の動向に着目したい。

(杉山 泰一=日経コミュニケーション)