パラダイン・ワールドワイド・コーポレーションは1月9日,長距離向けのDSL(digital subscriber line)である「ReachDSL」対応機器の価格を大幅に引き下げると発表した。対象となるのは,最大伝送速度が上り下り2.2Mビット/秒の「ReachDSL V2.2」の局側とユーザー側の両モデム。パラダインから通信事業者への販売価格を「従来の約半分まで引き下げ,ADSLと価格面での遜色がなくなる」(パラダイン日本支社)という。

 ReachDSLは伝送速度が1Mビット/秒以下になるものの,NTT局舎から遠いユーザー宅でも利用できる強みがある。ADSL(asymmetric DSL)ではサービス提供が難しい8k~10km以上のユーザーでも,上り下り500kビット/秒程度の速度で接続できた実績がある。地方部だけでなく都市部でも状況の悪い回線で効果を発揮する。ソフトバンクBBがYahoo! BBにReachDSLのメニューを用意。20万台を調達するなどしている。

 ただReachDSLのモデムは「普通のADSLの3倍程度」(あるADSL事業者)と導入時のコストが非常に高かった。ReachDSLに対応している事業者であっても「ADSLで手を尽くし,ReachDSLは最後の手段として使う」というケースが多かった。ADSLとReachDSLのサービス料金に大きな差を付けるのは難しく,Yahoo! BBのように同額に設定すると事業者側にある程度のコスト負担が強いられるからだ。

 値下げされたことにより,コスト面からReachDSLをためらっていた通信事業者が採用に動き出す可能性もある。結果としてADSLが使えない地方部を中心にブロードバンド・ユーザー数の上乗せに貢献できる。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)