中国がいよいよIPv6の商用ネットワークの構築に本腰を入れ始めた。まもなく,通信機器メーカーなどの入札が行われ,2004年前半にも実際のネットワーク構築作業が始まる予定だ。

 中国の信息産業部(日本の総務省に相当)は,11月末から12月にかけて開催された「第2回中国インターネット大会」で,「中国下一代互連網示範工程」(CNGI:china next generation internet)と呼ぶ中国の次世代インターネット計画に本格的に着手することを明らかにした。

 計画では,総額14億元(約200億円)をかけて2005年末までに中国の主要都市を結ぶIPv6の商用バックボーン・ネットワークを構築。2006年にはIPv6商用サービスを本格化させ,世界最大のIPv6商用ネットワークを実現することをうたっている。

 IPv6ネットワークに参加する通信事業者は,中国電信,中国網通,中国連通,中国移動,中国鉄通と,中国の教育研究機関のネットワーク「CERNET」(China Education & Research Network)の6事業者・組織。14億元のうち,中国政府が直接負担するのは4億元で,残りの10億元はこれらの事業者が共同出資する。バックボーンも,事業者が共同で構築する。

 中国の各報道メディアもIPv6関連の特集記事をこぞって掲載。北京・上海間を結ぶ超高速鉄道計画になぞらえて,IPv6を「IPの新幹線」とたとえる記事や,中国の携帯電話ユーザーが約2億5000万人に達している現状を指摘して「携帯電話がそのままインターネット端末になる今後は,IPv4のアドレス枯渇に拍車がかかる」と警告する研究者の声を載せる記事もある。

 米国では,国防総省が6月に「2008年までに国防総省関連のIPv4ネットワークをIPv6に完全移行する」と発表。機器メーカーなどにIPv6への対応を義務付けると同時に,10月に準備の一環として,実証実験「Moonv6」を始めた。

 最近,日本ではIPv6への懐疑論を聞くことも少なくない。しかし,東西の巨大ネットワークがIPv6に本腰を入れ始めたことで,早くからIPv6に取り組んできた日本の通信事業者や機器ベンダーの努力が報われる目が出てきた。

(野沢 哲生=日経コミュニケーション)