警察庁は12月18日,IP電話からの110番通報に関する技術仕様を策定したと発表した。19日に技術仕様案を公開し,来年1月19日まで一般から意見を募集する。

IP電話の利用者は,ソフトバンク・グループが300万以上のユーザーを集めるなど急速に増えている。その一方,ほとんどのIP電話サービスが110番や119番などの緊急通報を実現していない。今回は主として警察側が,どういった仕様でIP電話からの緊急通報を受けるのかについて策定した。

 IP電話による緊急通報が実現できなかった理由は大きく二つ。まずは居場所の特定。IP電話は固定電話とは異なり,設置場所を特定するのが極めて難しい。

二つめが通話の優先である。インターネットやIP網が混雑した場合に,緊急通報のパケットを優先して通す仕組みが必要となる。また,警察側で用意する緊急通報システムを,DoS(denial of service)攻撃やウイルスなど不正なアクセスから守る必要もある。

 米国ではヴォネージュというIP電話事業者が,この春から緊急通報を実現している。ユーザーが自らWebページで居場所を登録し,ヴォネージュ側で管轄の警察・消防当局に通報を転送する。

 なお,総務省は来年の3月にIP電話の緊急通報に関する検討グループを発足させる見込み。同省は現在,携帯電話による緊急通報についての議論を進めている。携帯電話での成果を,IP電話に反映させる考えだ。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)