NTT東日本は12月15日,公正取引委員会が12月4日に同社に出した排除勧告を応諾しないことを決めた。NTT東日本のFTTH(fiber to the home)サービス「Bフレッツ ニューファミリータイプ」の提供形態が,独占禁止法に違反すると指摘していた。この勧告にNTT東日本が応諾しなかったため,公正取引委員会で「審判」と呼ぶ手続きが始まる。通信関連で審判手続きに入るのは初めて。

 公正取引委員会が指摘した点は主に二つある。一つは,Bフレッツ ニューファミリータイプの月額料金が,他の通信事業者に光ファイバを貸し出す際の卸料金より安いこと。ニューファミリータイプは月4500円で提供しているが,他の通信事業者への貸し出し料金は月5200円程度と割高である。NTT東日本によると電柱上で光ファイバを分岐して光ファイバのコストを複数ユーザーで頭割りにしているはずだった。しかし現状は分岐せず,1心を1ユーザーで利用していることが判明して問題となった。

 二つめは,ニューファミリータイプのシェアが独占的であること。公正取引委員会によれば,「東日本エリアの一戸建て向けFTTHサービスでは9割のシェアを持つ」という。公正取引委員会は,独占的なシェアを持つNTT東日本が他社が実現できない格安料金を設定して競争を阻害しており,独占禁止法違反に当たると判断した。

 これに対してNTT東日本は,「他社にも,分岐方式と1心方式の両方の形態で光ファイバを貸し出している。そのうえ,シェアが9割と言われても本当なのかよく分からない。説明を受けずに,応諾するわけにはいかない」と判断して応諾しないことを決めた。審判手続きは公正取引委員会で,公正取引委員会の調査部門とNTT東日本の言い分を聞いてから処分を決定する。早ければ12月中に着手する予定だ。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション)