公正取引委員会(公取委)は12月4日,独占禁止法の第3条「私的独占の禁止」の規定に違反するとしてNTT東日本に勧告を行った。NTT東日本のFTTH(fiber to the home)サービス「Bフレッツ ニューファミリータイプ」が申請通りの提供形態になっておらず,戸建住宅向けのFTTH市場への他事業者の参入を妨げていると判断した。同行為に対しては11月12日,総務省が行政指導を行っていた。NTT東日本は法律違反の勧告という,さらに厳しい措置で追い討ちを食らった形になる。

 NTT東日本のニューファミリータイプでは,1心の光ファイバを最大8ユーザーに分岐させるPON(passive optical network)と呼ぶ設備を使うことになっていた。光ファイバ1心を引き込む「Bフレッツ ビジネスタイプ」よりも,ニューファミリータイプを割安にできる根拠は,PONを使うことにあったからだ。しかし,NTT東日本はPONを使わず1心の光ファイバをユーザー宅まで引き込んでいた。

 NTT東日本は,「需要が少なかったために取った暫定的な措置。1ユーザーに提供する場合,わざわざPONを使うより1心で引き込む方がコストが安かった」としている。しかし公取委の調査によると,NTT東日本は暫定的とはいえ,どのくらいの需要があればPONを使った構成に移行するのかなどの具体的な計画を全く立てていなかった。

 他事業者がBフレッツの設備を借りて戸建向けFTTHサービスを提供する場合,32ユーザー分をまとめて借りなければならない。仮に32ユーザー分の設備を借りて,その設備に1ユーザーしか収容できなかった場合のコストは1ユーザー当たり1万7145円にもなる。

 こうした提供条件で他事業者に貸し出す形にしておきながら,NTT東日本自身は「1ユーザーにPONを使うのは提供コストが高い」として使っていなかった事態を公取委は重視。実質的に一つの設備に32ユーザーも集めるのは難しいことが分かっていながら,現状の貸し出しルールを他事業者に課すのは,戸建向けFTTH市場への他事業者の新規参入を阻害していると判断した。

 公取委によると,今回の勧告は公取委独自の調査によるもの。11月12日の総務省の行政指導とは関係なく,たまたま勧告の対象が同じだったとしている。公取委の調査がNTT東日本に入ったと7月に一部報道があった。実はその時に,現在の勧告につながる調査が始まっていたという。

 NTT東日本は今後,今回の勧告を応諾するかどうか12月15日までに公取委に対して伝えることになる。現状では「勧告で指摘された事項が私的独占に当たるとの見解には疑問がある」とコメントを発している。

(宗像 誠之=日経コミュニケーション)