愛媛県松山市の総務省四国総合通信局は,「災害情報サポートシステム」と呼ぶ災害時の通信用ネットワークを松山市内に試験的に構築し,12月4日に運用実験のデモを一般公開した。

 実験では,仮想的な対策本部や災害現場,避難所,救急用の車両などをIPv6で接続。移動中の「防災指揮車」が災害現場の映像を見ながらIP電話で指示を出す,などの場面を公開した。

 今回の実験は,四国総合通信局の「災害情報サポートシステムに関する調査研究会」が,公共分野におけるユビキタス・ネットワークの実現を目指す目的で実施したもの。ネットワークは,災害などの緊急時に,災害対策本部と災害現場に加えて,移動する防災指揮車,救急車,消防車,パトカーなどと各防災関係機関の間で通信を確保。ビデオ映像など大容量の情報共有ができるように構築した。

 具体的には,対策本部に見立てた松山市消防局や,被災地や避難所に見立てた松山市総合コミュニティセンターなどの拠点を,独自に構築した中継網を通して接続した。この中継網は,NTT西日本の閉域網「地域IP網」と光ファイバ・サービス「Bフレッツ」のインフラを実験用に借りて構築したものである。移動車両の通信手段には,無線LANを採用。幹線道路2.5kmにわたり8台の無線LAN基地局を設置し,移動中の車両と対策本部などが通信できるようにした。

 IPv6は,IPでの移動通信を容易にするために利用している。各拠点や車両内に,移動通信用のプロトコル「Mobile IPv6」搭載の米シスコ・システムズ製の小型ルーターを設置。IPv4で動作するIP電話機などの通信パケットをIPv6パケットでカプセル化する「IPv4 over IPv6」トンネリング技術などを使って,移動車両と拠点間,または移動車両間の通信を実現した。

 四国総合通信局は,「細かいトラブルはいくつか起こっているが,全体としては予定していた実験はすべてこなせた」(電波管理部企画調整課)と説明する。5日も一般公開する。

(野沢 哲生=日経コミュニケーション)