米国連邦通信委員会(FCC)は12月1日,IP電話サービスを規制するかどうかを議論する作業部会を設立したと発表した。名称は「FCC Internet Policy Woking Group」。作業部会には,FCCの規制や有線サービスに関する委員などが参加する。FCCは米国における通信の規制などルール作りを担当する独立機関。

 この背景には,米国のいくつかの州政府がIP電話への規制に乗り出し始めたことがある。現在のところIP電話は,インターネット接続サービスとして「データ通信」に分類されている。ところが,2003年夏あたりからミネソタ州やカリフォルニア州などいくつかの州政府が異議を唱えた。

 IP電話サービスも「電話」の免許を取得もしくは同等の義務を負うべきとしたのである。例えば,ミネソタ州は7月に大手のIP電話事業者の米ヴォネージュに命令を出している。米国では州政府が州内の通信サービスの規制権限を持ち,各州の公益事業委員会が管轄している。

 ミネソタの公益事業委員会が要求している主な点は大きく二つ。(1)IP電話サービスも電話サービスと同等の免許を取得し,州に税金を支払うこと,(2)「911番」の緊急通報への通話を確保し,運用に必要な資金を州に拠出すること--である。このほか,IP電話をユニバーサル・サービスとして広くあまねく提供することも議論の焦点として挙げている。

 10月には,ミネソタの地方裁判所が「ヴォネージュは電話事業者ではない」とし,規制すべきではないとの判断を下している。もっとも,FCCが作業部会を設置したことで,IP電話の規制について議論はより深まる見込みだ。

 FCCのマイケル・パウエル代表は,「インターネットを基盤としたサービスは通信業界に大きな影響を与えていくだろう。どのような規制が適当か,作業部会で議論したい」とのコメントを発表した。また,FCCは同日12月1日にIP電話サービスの規制に関する会議を開催。FCCの委員のほか,ヴォネージュなどIP電話事業者,カリフォルニア州など州政府の担当者が参加した。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)