第3世代移動通信システム「IMT-2000」の通信方式の一つである「TD-CDMA」(time division-code division multiple access)を利用した移動通信サービスに,ADSL(asymmetric digital subscriber line)事業者のイー・アクセスと英ケーブル・アンド・ワイヤレス(C&W)の日本法人C&W IDCが参入を検討していることが明らかになった。

 両者は既存の固定通信事業に加えて移動通信サービスに進出することで,新たな収益源の確保を狙う。同方式を利用した移動通信サービスは複数の事業者が参入する方向で検討を進めており,NTTドコモ,KDDI,ボーダフォンに次ぐ新たな携帯電話事業者が複数誕生する可能性が出てきた。

 現在,日本では3G携帯電話サービスはNTTドコモとボーダフォンが採用する「W-CDMA」(wideband-CDMA)と,KDDIグループが採用する「CDMA2000」の二つの通信方式が実用化されている。ただし,IMT-2000にはこれら以外にも3方式あり,TD-CDMAもそのうちの一つに当たる。

 ITU(国際電気通信連合)では,W-CDMA,CDMA2000以外の方式を使った3Gサービスを使用することも推奨しており,そのために,2.01G~2.025GHzの周波数帯を使用することが国際的に決まっている。日本でも現在,同周波数帯は何も割り当てられていない。

 総務省は,10月29日の情報通信審議会で,TD-CDMAを含む現在実用化されていない三つの通信方式を日本で採用するかどうかの技術評価を審議することを決定した。

 これを受けて「携帯電話等周波数有効利用方策委員会」が,具体的な技術評価に入る。第1回の委員会は11月28日から始まる。これらの結果を踏まえ,情報通信審議会は2004年春ごろにも採用の是非を答申する予定だ。

 同方式は,既にマルチメディア総研が子会社のアイピーモバイルを通じて実用化に向けた実験を開始。TD-CDMA方式の実験免許を総務省から取得してフィールド試験を続けている。10月29日にはNTTコミュニケーションズが参加を表明している。

 ソフトバンクも同方式を使った移動通信サービスの実現に向けて,総務省に実験用の無線基地局免許を申請中だ。

(蛯谷 敏=日経コミュニケーション)