米国で11月24日,携帯電話事業者間,または固定電話事業者と携帯電話事業者の間での番号ポータビリティ制度(LNP:local number portability)がスタートした。ユーザーは,同一地域であれば,固定電話でも携帯電話でも,電話番号は変えずに電話事業者を切り替えられるようになった。固定電話事業者はこの制度に一斉に反発しながらも,ユーザー獲得の立場から制度に対応する事業者も登場してきた。

 米国の番号ポータビリティ制度は97年に固定電話事業者間でスタート。その後5年間もの間,携帯電話事業者間への適用について議論が続いていた。この議論は10月7日にようやく収束し,11月24日に同制度が発足するスケジュールだった。ところが,米FCC(連邦通信委員会)は11月10日になって突如,固定電話と携帯電話間でも11月24日までに番号ポータビリティへに対応することを事業者に義務付けた。

 米国の地域電話事業者約800社および400超の機器ベンダーや工事事業者などで構成する業界団体「USTA」(United States Telecom Association)は11月21日,FCCの決定の施行停止を求めてワシントンD.C.の連邦控訴裁判所(日本の高等裁判所に相当)に提訴した。同裁判所は,11月24日の週にUSTAとFCCから事情を聞くスケジュールを決めるなど,審議する姿勢は見せながらも,11月24日の同制度の開始は是認した。

 しかし,固定電話事業者側の同制度反対の足並みはすでに乱れている。大手の固定電話事業社の米SBCコミュニケーションズは11月24日,FCCの決定を「残念」としながらも,番号ポータビリティへの対応完了を発表したからだ。SBCは,米ベルサウスと共同で設立した携帯電話事業者「米シンギュラ・ワイヤレス」のサービスとの各種の割引パッケージ・サービスを打ち出して,ユーザーの他事業者への流出を防ぐ作戦に出ている。

 日本でも携帯電話事業者間の番号ポータビリティは議論の真っ最中。ただし,米国と違って,固定電話と携帯電話で全く異なる番号体系を使っているため,固定と携帯間で電話番号が移動できる見通しは立っていない。

(野沢 哲生=日経コミュニケーション)