総務省は11月18日,通信市場における事業者の競争状況について大規模な調査を実施すると発表した。同省は競争状況を把握し評価することで,通信事業者や市場に対し規制を強化したり,逆に緩和する際の判断基準を得る考え。従来東西NTTにかけていた通信設備のシェアによる規制から,通信サービスのシェアなど実態に即した規制への転換を図ったものといえる。7月に開催した同省の研究会「IP化等に対応した電気通信分野の競争評価手法に関する研究会」の結果を受けた取り組みである。

 初回となる2003年度は「インターネット接続」について調査する。2004年3月までに調査と分析を実施し,その後結果を発表する。(1)事業者からの加入者数などの情報提供,(2)利用者の意見聞き取り,(3)一般からの意見公募,といった方法でデータを集める。そして,市場を分類し競争状況を数値化して公表する。

 最も難しいのは,評価する市場の分類である。例えば,インターネット接続といっても,さまざまな市場やサービスが存在する。ADSLやFTTHといった有線だけでなくPHSを使った無線サービスがあり,それぞれ個人と法人向けのサービスがある。ところが,個人向けのADSLやFTTHを法人向けのサービスのアクセス回線に利用するなど垣根があいまいになりつつある。また,ADSLサービスをとると,インターネット接続事業者(ISP),ADSL事業者,メタル回線を提供する東西NTT地域会社など複数の事業者が関わっている。ソフトバンクBBのようにISPとADSL事業者を兼ねているところもある。

 同省はインターネット接続以外に,固定通信,移動通信,専用線,データ通信といった分野を評価対象として想定している。これらは来年度以降調査する予定。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)