パワードコムとフュージョン・コミュニケーションズは11月18日,両社の電話事業を統合する検討に入ると正式に発表した。このために,パワードコムの白石智社長,フュージョンの角田忠久社長を主査とする「統合検討委員会」を17日に設置した。今後2カ月以内に統合するかどうかの結論を出すという。

 パワードコムが手掛ける電話事業は,「マイライン」登録が可能な「東京電話」と,自らアクセス回線を引き込む直収電話,2003年に参入したブロードバンド向けのIP電話から成る。今回の事業統合では,これらの事業をすべてパワードコム本体から切り離し,フュージョンと統合させる方向で検討を進める。例えば,パワードコムが電話事業をフュージョンに移管すると同時に,その価値に見合う新生フュージョン株を受け取る手法などが候補に挙がっている。基本合意に達したら,2社は2004年の早期に統合を完了させる方針だ。

 「マイライン」の県間通話区間の登録件数で見ると,2社が抱えるユーザー数はパワードコムの東京電話が業界4位で200万件弱,フュージョンが同5位で約143万件(9月末時点)。2社の電話事業を統合すると,順位は変わらないが,同区間で422万ユーザーを持ち業界3位の日本テレコムに迫る。マイライン登録者に占めるシェアは8%を超える見通し。さらに,パワードコムが強みを持つ法人向けデータ通信回線とフュージョンのIP電話のノウハウを組み合わせた新サービスなどが開発しやすくなる。

 なお,今回の事業統合に先だってパワードコムは10月末にフュージョンが実施した第三者割当増資を引き受け,同社に3%弱を出資している。2社は,この資本提携に基づいて(1)NTTに支払う電話接続料を節約するために,フュージョンがパワードコムの持つGC(加入者交換局)-ZC(中継交換局)間の中継回線を活用する,(2)フュージョンの法人向けIP電話サービスで,パワードコムが提供する広域イーサネット「Powered Ethernet」をアクセス回線のメニューに加える,(3)パワードコムが手掛ける全国IP電話網に,フュージョンが構築したIP基幹網を利用する--ことでは既に合意している。

(玄 忠雄=日経コミュニケーション)