総務省は11月12日,NTT東日本のFTTH(fiber to the home)サービス「Bフレッツ」の一部サービス・メニューの提供方法が法律違反に当たる恐れがあるとして行政指導を行った。総務省は電気通信事業法に照らし,(1)サービス料金の算出方法が適正ではない,(2)他のメニューを使うユーザーに差別的な扱いをした,と判断した。総務省は是正の状況を報告するよう求めている。

 対象とされたのは,Bフレッツの最高伝送速度100Mビット/秒サービスのうちの「ニューファミリー」。ニューファミリーは1本の光ファイバを複数のユーザーで共有するのが特徴。NTTの電話局からユーザー宅の近くの電柱までは1本の光ファイバで,その先は最大8ユーザーに分岐する。NTT東はこれを,PON(passive optical network)方式と呼んでいる。

 ところが,総務省が情報を得て調査したところ「NTT東日本はニューファミリーのほとんどのユーザーに,PONではなくベーシックと同様の光ファイバ1心を占有する方式で提供していた」(総合通信基盤局データ通信課)という。ニューファミリーは月額4500円だが,光ファイバの心線を1ユーザーで占有する方式の「Bフレッツ ベーシック」は倍の月額9000円で提供中である。

 NTT東は,「FTTHのユーザー数が少なかったため暫定的なものだった。もともと今年中に共有方式のPONに設備を移行する予定だった。いままでのユーザーにも本来のPONに移行していただく」(広報室)と弁明する。なお,同様のPONによる共有型FTTHサービスを提供しているNTT西日本は「当社のPONを使う共有型サービス,ファミリー100はすべて共有型で提供している。総務省にもそのように報告している」(広報室)と言う。

 今回の行政指導は他社がPONのFTTH設備を東西NTTから借りる場合にも影響しそうだ。東西NTTによる光ファイバの“卸値”は1本当たり月額約5000円だが,PONの場合は1ユーザー当たりの光ファイバのコストを2000円程度まで引き下げられる。もともとこの計算でニューファミリーは月額4500円という“破格”の値付けをしていた。この春にPONの構成を変えて5800円からさらなる値下げをしたが,実際にはPON自体が適用されていなかったことになる。

 “安く済む”のであれば,KDDIなど他社もNTTの設備を借りてFTTHサービスを提供したいと考えている。しかし,東西NTTは電話局側に置いたPONの通信機器は32ユーザーで一つのモジュールになっており,この32ユーザー単位で貸し出すと主張している。一方KDDIなどは,効率的にユーザーを集められるか分からないという理由で,それ以下の単位でのPONの貸し出しを要求している。総務省は今回の行政指導に合わせ「PONのより柔軟な料金を設定ができるかどうか,東西NTTに12月までに報告を求める」(料金サービス課)との考えも示した。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)