我々が(特許料)を払うべき特許があるのであれば,早め早めに言っていただきたい――。ソフトバンクの孫正義社長は11月10日,決算説明会の席上で同社が出願中のIP電話の特許について発言した。

 孫社長は,8月8日に開催した第1四半期の決算説明会でIP電話の特許を出願していることを明らかにし,「他社は,当社の特許に気をつけていただきたい」,「特許切れ直前の19年目になって,特許料を請求することがあるかもしれない」とぶち上げていた。また,その後8月本誌のインタビューに対して,「特許が成立したらライセンスしない」とも発言し,特許に関して強硬な姿勢を見せていた。

 ところが今回は違った。「他社が特許を持っているのであれば,早めにいっていただきたい」,「我々も他社に十分な警告をしていきたい」とやや態度を軟化させた。同社は特許庁に公開されているだけで5件の特許を出願中である。このうち2件が成立に向けた審査を請求している状態で,他の3件は出願しただけの段階にある。

 一方で孫社長は「ほかにも数十件の特許を出願している」と明らかにした。もっとも特許は出願から一般に公開されるまで1年半かかる。孫社長のいう新たな特許が実在するかどうか,現状では確認する術はない。

 ソフトバンクの決算は,2003年4~9月の連結売上高が2254億円で,前同期比18%増えた。営業利益から法人税や投資による損失などを除いた純利益は連結で773億円の赤字。前年同期に比べて215億3600万円損失が拡大した。ADSLサービス「Yahoo! BB」の新規ユーザー獲得コストが大きく響いた格好になった。一方で,前期の赤字の主要因であったADSLサービスのインフラへの投資は,今期は一段落した。

 またYahoo! BBのユーザー数に関しては,10月末に339万9000件に。孫社長は従来同様に「2004年3月に400万を目指す」と述べた。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)