電力系通信事業者大手のパワードコムとIP電話事業を手がけるフュージョン・コミュニケーションズは10月30日,パワードコムがフュージョンに初めて資本参加すると同時に,通信設備の一部を相互に利用する業務提携を結んだことを明らかにした。一部報道にある「パワードコムによるフュージョンの子会社化」や「両社の電話事業の統合」は否定した。

 フュージョンは10月31日に第三者割り当てによる19億5000万円の増資を実施する予定。そのうち,5億円分をパワードコムが負担する見込みである。パワードコムによるフュージョンへの資本参加は今回が初めてで,出資比率は約2.7%となる。

 出資と同時に,両社は通信設備の相互利用でも合意した。関東圏で電話サービス「東京電話」を展開するパワードコムは,通信網を「GC」と呼ぶNTT東西の加入電話網の末端の電話局で接続している。これに対してフュージョンはこれまで,「IC」(区域内中継局)と呼ぶ県単位の交換局でしか加入電話網と接続していなかった。

 フュージョンは相互利用のメリットを,「パワードコムのGC接続設備を一部利用することで,IP電話と加入電話間の通話の際に,NTT東西に支払う接続料を軽減できる」と説明。パワードコムも,「イーサネットを使ったアクセス回線をフュージョンの企業向けIP電話サービスのアクセス回線のメニューに加えられる」と言う。

 業務提携に至ったきっかけは,パワードコム,フュージョンのほか,KDDI,日本テレコム,ケーブル・アンド・ワイヤレスIDCの電話事業者5社が,7月にNTT電話接続料をめぐって総務大臣を相手に起こした行政訴訟。「トップ同士が直接話す機会が増える中で,提携でシナジー効果を追求しようという話になった」(フュージョン)という。

 両社は今後も業務上の提携を進めていく姿勢だが,一部報道にある「電話事業の統合」については,「2.7%の出資比率ではそんな話になり得ない」(フュージョン)。「出資比率を50%以上に引き上げて子会社化する」という点についても,「具体的にはなにも決まっていない」(パワードコム)などと,それぞれが否定した。

(野沢 哲生=日経コミュニケーション)