国内外で電気通信政策にかかわる関係者が一堂に会した「電気通信分野の競争評価についてのカンファレンス」が10月22日,都内で開催された。主催は総務省で,海外から英国電気通信庁(OFTEL)の主席エコノミストであるピーター・カルハム氏,EU情報社会総局のB2課アドミニストレーターのピアース・オドノヒュー氏を招いた。総務省はカンファレンスによって,通信市場の競争状況を把握し評価するために総務省が実施する大規模調査への理解を深めたい考え。同調査は2003年度内をメドに,通信事業者やユーザーから聞き取りなどによって実施する。

 午前は総務省の有冨寛一郎総合通信基盤通信局長が「日本におけるブロードバンドの普及状況と競争政策」について基調講演を実施(写真)。大橋秀行公正競争推進室長が調査の手法について説明した。OFTELのカルハム氏は英国における競争状況のはかり方を述べた。

 大橋室長は調査の具体案として,「2003年度は,関心が高いと思われるブロードバンドや光ファイバなどのインターネット接続を分析の対象として取り上げる」と説明した。ただし通信市場を分析する上で課題がある。市場の分け方によっては,特定の事業者やユーザーが有利になったり不利になる可能性があるからだ。「事業者やユーザーからデータを収集したうえで分析し,データの共有や公表を図っていきたい」(大橋室長)。

 OFTELのカルハム氏によると,英国では独占的な市場の見極め方として,(1)一つの事業者の持つシェアが高すぎる,(2)市場シェアの動きがない,(3)市場への参入障壁がある,(4)高すぎる価格が設定されている,(5)顧客が市場で代替のものを選択できない--といった五つの尺度で認定するという。なかでもシェアについては「一つの事業者が40%であれば独占の可能性,50%では確実に独占といえる」(カルハム氏)。

 同カンファレンスは午後には,NTT東日本,ニフティ,KDDI,東京電力,日本テレコム,ケーブル・アンド・ワイヤレスIDC,NTTドコモ,ボーダフォン,ソフトバンクBBといった各社の企画部門幹部が出席。通信業界の競争評価に関するパネルディスカッションを実施する。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)