NTTの情報流通基盤総合研究所は10月20日,映像などを高品質に同報配信できる「マルチキャストMPLS(multiprotocol label switching)」と呼ぶプロトコル仕様を作成したと発表した。

 NTTは仕様策定に加えて,この機能を実装したルーター・ソフトウエアを米モトローラと開発した。「網内の帯域や遅延時間を制御できる」というMPLSの利点を保ったまま,「ネットワークに過度の負荷をかけずに映像などを同報配信する」というIPマルチキャストの機能を実現した。

 NTTは新プロトコルを業界標準にしたい考え。対応ルーターのマルチ・ベンダー化を進めた上で,NTTグループ内の事業会社への採用を呼びかける。NTTがグループで構築構想を打ち出している「RENA」(resonant communication network architecture)では,「中核技術になり得ると考えている」(ネットワークシステムイノベーションプロジェクトの松永亨プロジェクトマネージャ)という。

 NTTなどは今回開発した新プロトコルを,標準化団体のIETF(Internet Engineering Task Force)に草案として提案中。IETFの下の「MPLS-WG(working group)」で標準化作業の対象になることがほぼ決まったという。10月26~28日に米ワシントンD.C.で開かれる国際会議「MPLS2003」でも,技術の発表・出展を予定している。

 マルチキャストMPLSは,既存のMPLSに独自開発した「最適経路計算アルゴリズム」と「MPLS向けマルチキャスト」の技術を加えて実現した。一般にIPマルチキャストでは,配信経路上のルーターでバッファあふれなどによるパケット損失を防げず,ふくそうや故障を回避した経路の設定もしにくい。新技術はルーター間で配信に用いる帯域を制御でき,ふくそうを回避できる。さらにマルチキャストに用いる転送経路も柔軟に設定できる。端末側はIPマルチキャストのプロトコルに対応するだけで,網側の配信サービスを利用できる。

(玄 忠雄=日経コミュニケーション)