携帯電話向けチップ・ベンダー大手である米クアルコムのイルウィン・ジェイコブズ会長兼CEOは14日,スイスのジュネーブで開催中の展示会「ITU TELECOM WORLD 2003」において,第3世代携帯電話(3G)の普及予測を語った。「2~3年の間は,3Gと第2世代携帯電話(2G)など複数の方式に対応した端末が主流になるだろう」(ジェイコブズ会長)。シングル・モードのチップを個別に開発するよりもコスト・ダウンが計れることや,通信・通話できるエリアのカバー率が広くなることなどを理由として挙げた。

 クアルコムは既に,3GのW-CDMA(wideband code division multiple access)と2GのGSM(global system for mobile communications)の両方に対応するチップを開発済み。W-CDMAと,GSM上で高速データ通信を実現するパケット方式であるGPRS(general packet radio service)のデュアル・モードのチップも開発している。

 さらに5月,CDMA2000 1xとW-CDMAに加え,1xEV-DO(1x evolution-data only)とHSDPA(high-speed downlink packet access),さらに無線LAN規格「IEEE802.11」に準拠するマルチ・モードのチップ「MSM7000」シリーズを,2004年までにサンプル出荷すると発表した。ジェイコブズ会長によると,一般的にチップの開発に9カ月,仕様に問題がないかなどをテストする期間に2年を要するという。

 一方,GPRSの後継技術に当たるEDGE(enhanced data rates for GSM evolution)については懐疑的な見方を示した。最大171.2kビット/秒のGPRSに比べ,EDGEは最大473kビット/秒と高速。サービス開始が遅れている3Gを前に,GPRSからEDGEでデータ通信の高速化を図る携帯電話事業者もいる。

 しかし現状では,対応が遅れている。米シンギュラ・ワイヤレスや米ベライゾン・ワイヤレスがEDGE対応を検討しているものの,サービス化は確定していない。「GPRSはスループットで見ると通常30k~40kビット/秒で,ひどいときは10kビット/秒ほどしか出ない場合もある。主な理由はGPRSのタイム・スロットの仕組みによるもので,これはEDGEでも同じ。スループットは期待するほど出ない可能性がある」(ジェイコブズ会長)ことなどを挙げた。

 また,中国が採用した3Gの方式であるTDS-CDMAについては,「市場に現れるまでは2年以上を要するだろう」と語った。

(閑歳 孝子=日経コミュニケーション,ジュネーブ発)