韓国のサムスンは,スイスのジュネーブで開催されている通信の総合展示会「ITU TELECOM WORLD 2003」において1xEV-DV(1x evolution-data and voice)方式に対応したテレビ電話のデモを実施している。「1xEV-DVを実演するのは,世界で初めてになる」(サムスン)。

 1xEV-DVは,1.25MHz幅の拡散帯域幅を使う移動体向け高速データ通信規格「CDMA2000」の技術仕様の一つ。データ通信と音声通信をサポートし,QoS(quality of service)などの機能を付加したことが特徴。auの第3世代携帯電話サービス「1xEV-DO」(1x evolution-data only)は,データ通信のみの対応。1xEV-DVの通信速度は下り最大4.8Mビット/秒と,最大2.4Mビット/秒である1xEV-DOをより高速にした。

 1xEV-DVは標準化団体である3GPP2(Third Generation Partnership Project 2)が2002年に仕様を固める予定だったが,積極的に採用を検討する通信事業者が現れなかったなどの理由で,標準化作業は休止状態になっている。このため今回,サムスンが実演したのは“独自規格”の1xEV-DVになる。デモでは呼制御にH.323を利用。「呼制御にSIP(session initiation protocol)を使う形態も開発中」(サムスン)。ビデオ通信は153.6kビット/秒,ビデオ・オン・デマンドは250k~300kビット/秒での通信を実演した。

(閑歳 孝子=日経コミュニケーション,ジュネーブ発)