スイスのジュネーブで開催中の「ITU WORLD TELECOM 2003」には,初めての試みがいくつかある。その一つが,これまでの展示ブースとは一風変わった「Telecom Village」である(写真1)。

 7ホールある展示会場うちの1ホールが,まるごとTelecom Villageとして公開されている。米シスコ・システムズやカナダのノーテル・ネットワークス,米ヒューレット・パッカード(HP),米サン・マイクロシステムズなどが巨大な建物を作り上げていた。Telecom Village外の出展者でも2階建て,3階建ての大きなブースを出している場合もあるが,これらよりも頑丈な作りで,あたかも仮設したオフィス群のようになっている。

 こうしたブースを設けた目的は「話し合いの場をより多くするため」(ITUの内海善雄事務総局長)。この言葉通り,シスコやHPなどはブース内で行う多くのセッションを開いており,たくさんの人が集まっていた。またラウンジのようなフリー・スペースだけでなく4隅を仕切った“個室”を用意する企業が多い。静かで,話が漏れることが避けられるため,商談に向いているという(写真2)。

 こうした流れからは,出展者にとってTELECOMというイベント自体の位置付けが変わってきた一面が見て取れる。ベンダーにとっては,新製品や開発中の製品を公開する場というよりも,コンセプトと既存の製品を見せながら顧客にイメージをつかんでもらう場としての面が強まってきたようだ。ノーテルは「展示してある製品はすべて,既に市場で実際に稼働しているものばかりだ。一部の顧客には開発中の製品も見せているが,一般には公開していない」(ピーター・フィンター・エンタープライズ・ソリューションEMEA)と言う。

(閑歳 孝子=日経コミュニケーション,ジュネーブ発)