スイスのジュネーブで現地時間10月11日に始まった「ITU TELECOM WORLD 2003」で,日本テレコムが波長VPN(仮想閉域網)サービスのプロトタイプを公開した。波長VPNとは,同一の光ネットワークを使いながら,光の波長を換えることによってVPNを構築するもの。日本では10月8日に記者発表したばかりである。
デモでは,管理ツールから仮想的に置いた4拠点のうち3拠点を選び,即座に3拠点を結ぶ波長VPNを構築する様子を披露した(写真1)。具体的には,日本テレコムが独自に開発した光クロスコネクト(PXC:photonic cross-connect)と呼ぶ波長ルーター(写真2)と,CWDM(coarse wavelength division multiplexing)装置とを,光ファイバで結んである。GMPLS(generalized multiprotocol label switching)と呼ぶ経路制御技術を使うことで,ユーザーが自らVPNを設定できる。
光クロスコネクトのプロトタイプは,入出力にそれぞれ8ポートを用意。通信相手の切り替えに使う鏡を縦8×横8に並べてある。通信する拠点が変わるごとに,これを静電気で動かし,反射角を変えて経路を決める。1入力に付き任意の経路を一つ決められる。二つの経路に分岐する光のマルチキャスト技術も開発済みだが,今回のプロトタイプでは実装していない。
日本テレコムは,大容量の画像データを扱う目的などでギガビット級の帯域を必要とする企業を主なターゲットに想定している。「大容量が必要といっても,夜間の特定の時間だけ使えれば良いという企業もいる」(日本テレコム)。こうした企業が,波長VPNサービスを利用ことによって大容量の通信をする時間を限定しておくと,比較的安価に大容量の通信サービスが手に入る可能性があるという。
(閑歳 孝子=日経コミュニケーション,ジュネーブ発)
写真1 デモの様子
写真2 光クロスコネクト