KDDIは10月8日,今月10日から集合住宅向けのFTTH(fiber to the home)サービス「KDDI光プラス」の提供を開始すると発表した。

 最大の注目点は,インターネット接続とIP電話のセット利用料金(通話料分を除く)を月額4550円と低料金にしたこと(機器レンタル代を含む)。IP電話は,既存の電話とほぼ同じ機能を実現しており,ユーザーはNTT電話を不都合なく解約できる。このため,ユーザーの月額負担は「NTT電話の契約が前提となるADSL(asymmetric digital subscriber line)より軽くなる」(片岡浩一・ブロードバンド・コンシューマ事業本部 ブロードバンド企画部長)。まず都内の2カ所のマンションでサービスを開始し,年度内に全国主要15都市にある複数のマンションにサービス対象を拡げる計画だ。

 KDDI光プラスでは,インターネット接続の「光プラスネット」,IP電話の「光プラス電話」,IP放送の「光プラスTV」という,三つのメニューを用意した。光プラスネットはマンション棟までを最大1Gビット/秒で接続し,各戸への分配はVDSL(very high speed DSL)を使うことで,既設の電話回線ながら最大70Mビット/秒の帯域を確保した点が特徴。「マンション向けFTTHでは最高速度のサービス」(片岡部長)という。

 光プラス電話は,加入電話と同等の機能を実現したことで,NTT電話のユーザーが既存番号をそのまま移行させる「番号ポータビリティ」に対応した。緊急通報が可能なほか,時報や天気予報,番号案内などの付加サービスも順次提供する予定で,「生活に必要な,利用頻度の高い付加サービスは,追って加えていく」(片岡部長)。NTT電話への通話料は全国一律3分8円で,KDDIや提携プロバイダのIP電話ユーザー同士とは無料で通話できる。

 光プラスTVは,25チャンネルの番組をそろえた基本セットに加え,追加料金で視聴できる3チャンネルの番組,ユーザーが1作品ごとに購入するVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスをそろえた。月額2400円(機器レンタル代を含む)で,25チャンネルの基本セットと月間3本までのVODサービスが利用できる。VODサービスはサービス開始当初から2000タイトルを用意した。KDDIは,このサービスのために独自のCDN(content delivery network)を構築。IPマルチキャストやパケットの優先制御機能を使い,各戸に2~4Mビット/秒の映像ストリームを安定的に配信できる体制を整えたという。

 KDDI光プラスは,加入時に初期費用として2万円が必要なほか,必ずIP電話かネット接続のどちらかを選択する必要がある。単独の月額料金はIP電話が1980円(基本料),ネット接続が3900円である。

 一方,両者をセット契約すると月額1300円以上の割引で,IP放送サービスを加えた3メニューを契約しても月額料金は6950円。既存のFTTHサービスより割安感はある。マンション向けFTTHサービスでは,KDDIは先行するNTT東西地域会社や有線ブロードネットワークスを追う立場だが,「デベロッパーなどには,サービス内容を高く評価してもらっている」(片岡部長)といい,3割程度のシェアを獲得したい考え。2005年には小型のマンション,アパートにも提供対象を拡げ,2007年度に300万加入を目指す。

(玄 忠雄=日経コミュニケーション)