KDDIは9月24日,FMラジオの受信機能を組み込んだ「au」ブランドの携帯電話機を年内に投入すると発表した。合わせて,民間FMラジオ局53社と共同で,ラジオ番組と連動したパケット通信サービスも提供する。携帯電話機で,位置情報を元に受信できる放送局をリスト・アップしたり,放送中の楽曲の情報を表示できる。さらに楽曲情報を元に,ワン・クリックで楽曲の配信サービスなどを利用できるようにする。

 FMラジオ・チューナーを組み込んだ電話機は,後日,KDDIが発表する予定だ。チューナー自体は通常のアナログ放送を受信・再生する仕組みだが,ユーザー・インターフェースは携帯電話向けの組み込みソフト「BREW」で実現している。このため,使い勝手や機能を改良したバージョンアップ版を,逐次ユーザーに提供できる。最初のバージョンでは受信中のラジオ局を表示するほか,パケット通信で現在放送中の楽曲情報を取得し,画面に表示できる。

 ラジオ番組と連携した各種サービスもソフトの機能で提供する。ワン・クリックで,現在聴いている番組のホームページを閲覧できたり,楽曲をそのまま着信音にできる音楽配信サービス「着うた」から該当の楽曲をダウンロードできる。着うたは8月の月間ダウンロード数が700万に達するヒット・サービスに育っている。FMラジオを契機に,KDDIはコンテンツ配信やパケット通信事業のさらなる拡大を見込む。

 FMラジオ局側も今回のサービスの普及を目指し,民間FM局53社が集まった業界団体「全国FM連合」を結成。オンエア情報をKDDIに提供する体制を整えたほか,年内にもKDDIの新端末と連動したプロモーション番組を共同制作する予定だ。FM局は今回のサービスで直接収入を得るわけではないが,「端末が普及すれば聴取率(ラジオの視聴率)のアップにつながるほか,タイアップ・プロモーションなど大きなビジネス・チャンスを生む基盤になる」(J-WAVE(旧エフエム・ジャパン)の三ツ村孝成・編成局長)と期待している。
(玄 忠雄=日経コミュニケーション)