総務省の片山虎之助大臣は9月16日,「第3世代携帯電話など移動通信,無線LAN,情報家電の割り当て周波数を,今後10年かけて大幅に増やす」方針であることを明らかにした(写真)。この発言は,情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)が開催したシンポジウムでの講演で,電波の開放戦略について触れたもの。総務省は,1年ほど前から周波数割り当て制度の改革に乗り出しているが,戦略分野をここまで明示したのは異例のことだ。

 片山大臣は,「電波行政はこれまで(役所の)事務の一つだった。これからは,戦略的な立場から電波を最大限度まで有効活用し,国民のために本当に役立つものにする」と発言。従来の周波数割り当てシステムを大幅に見直す考えを示した。

 その上で,今後の電波政策のターゲットを「世界最先端のワイヤレス・ブロードバンド環境の実現」とした。具体的には,(1)第3世代携帯電話などの移動体通信,(2)屋内外で利用する無線LAN,(3)ワイヤレス情報家電--の3分野について,「今後10年で現行の4~5倍の帯域が必要になる」と予測。重点的に割り当て帯域を拡大する計画を示した。また,研究開発を踏まえ検討する新しい分野として,無線ICタグやITS(高度道路交通システム),UWB(ultra wide band),準天頂衛星通信システム--などを挙げた。

 拡大する帯域の周波数や割り当てスケジュールは,第3世代携帯電話や無線LANについてはほぼ決まっているものの,情報家電は未定。片山大臣は,「今後3年以内に5GHz帯付近に30MHz程度の情報家電専用の帯域を確保する」計画を明らかにした。

 片山大臣は講演の中で,電波の利用頻度の低い利用者を“退出”させ,新規参入を促進する仕組みや,電波の周波数の割り当て制度を現行の免許制から原則自由にし,電波干渉などのトラブルは事後調整とする仕組みについても言及。2004年の通常国会審議予定の電波法の改正案に盛り込む方針を示した。

(野沢 哲生=日経コミュニケーション)