NTTドコモは,9月12日朝の「NTTドコモが通話用PHS端末の新規開発を中止した」との一部報道について「具体的にそのような計画を決定した事実はない」と否定した。端末メーカーに対し製品開発を中止する方針を通告した件は,「メーカーとの守秘義務があり,回答できない」としている。

 報道で開発中止とされた通話用PHS端末とは,音声通話やインターネット接続が可能な「パルディオ」シリーズを指す。64kビット/秒の高速データ通信機能を備え,PHSを使う企業向けコードレス内線電話システム,いわゆる事業所PHSの子機としても利用できる。ただし同社のPHS契約数は170万加入前後と伸び悩んでおり,赤字体質から抜け出せない状況。ドコモの通話用PHS端末にはパルディオのほかに,携帯電話とのデュアルモード端末「ドッチーモ」シリーズもあるが,こちらは既に新製品の開発を止めている。

 一方で,ドコモはパルディオやドッチーモなどPHS端末を代替できる機能を持つ新端末を準備している。具体的には,第3世代携帯電話サービス「FOMA」と無線LANとのデュアルモード端末である。2004年春から夏に発売する。

 この端末は企業がVoIP(voice over IP)による内線電話網を構築している場合,オフィス内の無線LAN回線経由で電話がかけられる。パルディオが実現していた役割を代替できる端末を提供することで,ドコモがPHSからFOMAへの乗り換えを促す可能性が見えている。

(高槻 芳=日経コミュニケーション)