住友電気工業は9月2日,従来型の光ファイバよりも施工時に扱いやすく,より大容量のデータを伝送できる光ファイバ「PureAccess-PB」を発売した。地方自治体が構築する地域イントラネットや,FTTH(fiber to the home)サービス向けネットワークの局舎間接続での用途に向く。既にプリセールスを実施しており,広島県神石郡広域組合で運用が始まっている。

 PureAccess-PBの特徴は二つある。一つは,曲げ半径が従来の30mmから15mmへと2分の1になったこと。光ファイバは石英ガラスでできているため,小さく曲げようとすれば容易に折れてしまう。曲げたことで発生した目に見えない欠損が原因となって,経年劣化で断線などの障害を引き起こすこともある。PureAccess-PBは従来の光ファイバより曲げやすいため,施工作業の手間を省いたり,施工後の信頼性を高められる。また,より小さく曲がるため設置スペースを抑えられる。

 もう一つの特徴は,ほぼすべての波長帯域で光信号を伝送できること。従来の光ファイバでは,1380nm(ナノ・メートル,1mの10の-9乗)近辺の波長帯を持つ光信号を伝送できなかった。原因は,製造過程で光ファイバの中に残存した水分の影響から,光ファイバ自身が1380nm近辺の光信号を吸収してしまうからだ。従来の光ファイバで伝送できる光信号の波長帯は,1460~1625nmが一般的だった。

 PureAccess-PBでは,水分をできる限り除去できるように製造方法を改良し,1270~1625nmの広い波長帯域で光信号を伝送できるようにした。この結果,CWDM(低密度波長分割多重)技術を使った場合,従来は最大8~14波ほどしか多重伝送できなかった光信号を,最大20波まで多重伝送できるようにした。

 PureAccess-PBは,すでに提供済みの光ファイバ「PureAccess」と「PureBand」の技術を持ち寄って融合させた製品である。PureAccessは,1460~1625nm帯の光信号しか伝送できないが,曲げ半径が15mmと小さい。PureBandは,曲げ半径は30mmと従来の光ファイバと同じだが,1270~1625nmの広帯域で光信号を伝送できる。PureAccessは主にマンション内のLAN配線など設置スペースの限られた用途で,PureBandはCWDM装置を使って局舎間でデータ伝送する用途で使われている。

 なお,導入事例の第1号となった広島県神石郡広域組合の地域イントラネットは,NTT西日本が100%出資するネットワーク構築・運用子会社であるNTTネオメイトが構築した。広島県神石郡広域組合は,油木町,神石町,豊松村,三和町の4町村が2004年11月の市町村合併に向けて協議を進めている連合組織。合併に先駆けて,各町村役場や公民館などを結ぶ総延長70kmのPureAccess-PBで地域イントラネットを構築した。

(阿蘇 和人=日経コミュニケーション)