総務省は8月28日,NTT西日本に対してソフトバンクBBとの接続協議を再開するように命令を出した。ADSL(asymmetric digital subscriber line)の初期工事に関する問題で,ソフトバンクBBの申し入れを受けた格好となった。

 問題となっている工事は,ADSLサービスの開通時に実施するNTT局内のMDF(主配線盤)の配線工事。ソフトバンクBBはこの工事を自前で実施できれば,ADSLサービスの一律3050円という初期費用を安くしたり,申し込みから開通までの期間を短縮できると主張してきた。一方,NTT西日本は,「複雑に電話線がつながるMDFの工事を他社に任せると電話サービスの信頼性を確保できない」などの理由で認めなかった。

 もっとも,すぐにソフトバンクBBがADSLの初期工事を自前で実施できるようにはなりそうにない。命令は出たものの,工事の具体的な方法については両社の協議に委ねられたからである。誰が工事をするか,両社の連絡方法はどうするかなどについて,両社の考え方の隔たりは大きい。

 NTT西日本は命令を受けて,「ソフトバンクBBからの具体的提案を待って誠実に協議をしていく」と表明したものの,「電話の安定的提供やセキュリティ確保に支障が生じないように」という条件を加えた。電話への影響がある方法では,ソフトバンクBBの自前工事を認めないという方針を再度強調したわけである。ソフトバンクBBによる自前工事の実現までには,まだまだ時間がかかりそうだ。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション)