インターネットイニシアティブ(IIJ)などが出資するクロスウェイブ コミュニケーションズ(CWC)と,その子会社であるクロスウェイブ ファシリティーズ,クロスウェイブ サービスの3社は8月20日,東京地方裁判所に会社更生手続きの申し立てを行ったと発表した。3社は自主再建を断念し,東京地裁が選任した保全管理人の下で事業再建を目指す。同日,東京地裁より保全管理命令が発令され,保全管理人が選任された。

 会社更生手続きを申請した最大の理由は資金繰りの悪化。「データ通信市場での激しい価格競争と国内景気低迷の長期化により,事業開始時に見込んだ収支改善計画通りに進まなかった。公共的なインフラ事業を継続し続けるためには,自主再建を断念する必要があると判断した」(鈴木幸一社長)。

 今後,保全管理人は3社の事業を継続しながら,事業の売却などの手続きに入る。売却先は今後検討するが,「既に複数の会社が名乗りを上げている模様」(保全管理人の岡正晶弁護士)。

 CWCは1998年,ITバブルのまっただ中に鳴り物入りで登場した第一種電気通信事業者。IIJ,ソニー,トヨタ自動車が設立した。99年には日本初の広域イーサネット・サービス「広域LANサービス」を開始。通信料金が距離に依存していたそれまでの企業向け通信サービスに「接続ポートの数だけで料金が決まる」という新サービスで挑戦,企業向けデータ通信市場に新世代をもたらした。

 ただ,加入電話や専用線,携帯電話など幅広い通信サービスで多様な収益源を持つ他の大手通信事業者に比べて,企業向けデータ通信のみに特化していたCWCは,データ通信の値下げ競争の影響をもろに受けた格好となった。負債総額は2003年6月末で約662億円だった。

 CWCの通信サービスを利用するユーザー企業は2003年3月末で約460社。既存ユーザーについては今後も従来通りのサービスを継続して提供する。

(蛯谷 敏=日経コミュニケーション)