「停電が起こる可能性が高いのは,梅雨明けの8月4日からの1週間。お盆を過ぎれば,企業や家庭の電力消費量は減るだろう」--(施設管理部の塩谷正・部長:写真)。ケーブル・アンド・ワイヤレスIDC(C&W IDC)は,東京電力が招いた電力危機問題によって大規模な停電が発生するとしたら今週だと見る。

 国内外向けの専用線や電話,インターネット接続など様々な通信サービスを提供するC&W IDCは,英C&Wのグループ企業である。C&Wグループは,70カ国以上で通信サービスを提供中であり,50カ国以上に通信設備を持つ。

 C&W IDCは現在特にデータ・センター事業に力を入れており,首都圏に7カ所の通信施設を保有する。このうち5カ所がデータ・センターとしての役割を果たす。データ・センターは普段から,一日中,通信装置も空調も止めない前提で運用している。このため,「一般的な企業ほどは,今回の電力危機問題を心配してない」(塩谷部長)と自信を見せる。

 もちろん通常時の停電対策とは別に,特別な対策も施している。例えば,発電機を動かす事態になったら,夜間に燃料を給油する手配を今回整えた。複数の販売店と契約し,燃料を確保したのだ。「仮に停電が起こったとしても午後1~5時だと思われる。夜間に給油し続ければ,何日でも対応できる」(塩谷部長)。いざとなれば,発電機を稼働させた状態でも,タンクローリー車から給油することができる。

 C&W IDCの発電機は,燃料タンクを満タンにした状態で18時間稼働する設計になっている。これは通信設備がフル稼働している時の数値。「通信設備は余裕を持たせて動かしている。このため,燃料が満タンなら発電機は実質24時間分以上の電力を供給できる」(塩谷部長)。

 首都圏では過去10年にわたり,C&W IDCが発電機を稼働させるような大規模な停電は起こっていない。また発電機の燃料(軽油や重油)は,使わなくても時々,入れ替える必要がある。「燃料費,通信設備の稼働率,運用コスト,予備バッテリー代など様々な要素を加味して,18時間という設計値を決めた」(塩谷部長)。

 停電が発生すれば,交通機関が麻痺(まひ)し,必要な物資をスムーズに運べない可能性がある。そこで,「エンジン・オイルやフィルターなどの消耗品や,作業用工具類を,普段より多く用意した」(塩谷部長)。また,各拠点にある発電機や無停電電源装置(UPS)の数々は,導入時期に多少の差異があるため,利用マニュアルに違いがある。マニュアルをチェックし直して,非常時に混乱しないようにした。

(杉山 泰一=日経コミュニケーション)